雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

予定調和なエンディングは是か非か。

ようやく休日がやってきた。 前から観たかった映画を観に行こう。 ネタバレを見ないようにしてきたけど、評価はあちこちから聞こえてきた。 たくさん宣伝していて、まわりの人もけっこう観たようだ。 宣伝していた割に、評価はイマイチ。 耳を塞いでいても、…

東京ドームの広さがピンとこない。

テレビの向こうで女性が両手を広げる。 見て下さい、この広さ!なんと東京ドーム30個分の広さを誇っているんです。 うん。 ピンとこない。 きっと広いんでしょうね、くらい。 東京ドームは知っている。 なんとなくの広さをなんとなく知っている程度に。 東京…

メイク落としのベストタイミング。

素顔は見せたくないから。 ヒーローでもないのに、マスクをつける。 誰にもバレないよう、見られないよう。 素顔を隠す。 そんな毎日。 気を遣ったまま疲れ果てて、顔を隠したまま寝てしまう。 今日のメイク、なんだかいいね。 あら、ありがとう。 でも勘違…

毒は薬にだってなりえる。

あなたに毒を盛る。 少しずつ、少しずつ。 あなたに気づかれないように。 毎日、毎日。 それでも。 量が少なすぎるのか。 あなたが耐性を持っているのか。 あなたに変化は見られない。 それならば。 あなたの目の前で堂々と毒を盛る。 もちろん、毒だなんて…

自分と他人の評価が珍しく一致するとき。

夜が長い。 秋だから。 いや、違う。 何度時計を見ても、針は少ししか進まない。 体感では二時間くらい経っているのに、三十分しか進まない。 窓の外からは名も知らぬ虫の声。 コオロギとスズムシの区別すらつかない。 時計と同じ数だけ鏡を見る。 何度も、…

いつだってハードルは高め。

どうしてこんな顔をしているのか。 自分でもわからない。 視線はこっちを向いているのに宙を彷徨っている。 この頃はなんだかずっとしんどかったな。 なんて思いながら写真を眺める。 髪型も顔の形も肌の色も。 すべてが違う。 ほんの数年前なのに。 この頃…

終わりの続きを知りたくて。

すぐそこにあるのに。 手を伸ばせば届く距離に。 目の前にある映像や文字は、まるでおとぎ話のよう。 つながっているはずなのに。 どこかで断線している。 私の中には入って来るけど。 痛みは感じない。 感情が揺れたとして。流されたとして。 私の立ち位置…

そこらじゅうが火の元。

どんな小さな火だって火事の元。 火の用心。 尊い火は人々を助け、人々を滅ぼす。 どんなに小さな火だって、大きな火になる可能性を秘めている。 大きな火はもれなく、はじめは小さな火だったのだから。 どこまで燃え広がるのか。 私にも、誰にも、わからな…

輪廻転生のくりかえし。

朝起きたら、今日はがんばる、って決めたのに。 あれやって。これやって。 時間の経過と共に、あれやこれ以外にやらなくてはいけないことがたくさん出てきて。 あれやこれに手をつけることなく布団に潜る。 あれやこれをやらなくては、と思い、後悔し、情け…

誰かに期待するより自分に期待したい。

期待しすぎるとあとが辛いよ、って。 どこからか声がする。 まあ、確かに否定はできない。 大抵のことはそうだから。 でも、たまに、そうじゃないときがある。 上げに上げたハードルを越えてくるときがある。 だから、期待することをやめられない。 なんだか…

東西南北の大きなくくりじゃピンとこない。

本当に知りたいことはそこにはなくて。 大切なことなんだろうけど、なんだかピンとこない。 みんなが知りたいことなんだろうけど、なんだかピントが合わない。 流れる文字を眺め。 羅列された言葉を聞く。 上っ面しか知らないくせに、そのたびいちいち感情を…

絶妙で奇妙なバランス。

この世はきっと砂場のようなものだ。 なにもないところから。 大きな山ができて、大きな川ができて。 それだけじゃ物足りなくなって、大きな山にはトンネルを掘り。 それだけじゃ物足りなくなって。 建物作ったり、道路作ったり。 少しずつ、広げていって。 …

流れに乗っているのに流れに逆らっている。

ふらふら煙が漂う。 細いものから太いものまで。 小さく広がって、消えていく。 風に乗って、消えていく。 どこまで行くのか見届けても。 なにかにかき消されるよう、すぐにどこかへ消えてしまう。 肩をすぼめて、背中を丸めて。 地球は丸いって聞いているの…

何もしなかったら何も変わらない。

やかんが泣く。 ピーピー泣いている。 放っておいたら泣き続ける。 泣き声が大きくなるだけ。 湯気がもくもくと出る。 湯気が広がる。 どんどん、どんどん、広がっていく。 あたりは真っ白。 向こう側が見えない。 嗚呼。 この湯気の中から誰か出てくればい…

それぞれにそれぞれの役割がある。

君はいいね。親指さん。 どうして? 君ひとり立っただけで、他の人に、いいね、とか、グッド、とか伝えられるから。 そう?上に立てればいいけど、下に向けると大事になるけどね。 君はいいね。人差し指さん。 どうして? 君ひとり立っただけで他の人に方向…

答え合わせはその時に。

ブー。不正解。 ブー。不正解。 ブー。これも不正解。 ちゃんと当てにいっているのに。 正解だと思っているのに。 正解はなんなのか。 答え合わせをしようじゃないか。 昔の自分に問いかける。 今の自分は正しいのか。 ブー。 ブー。 ブー。 どれも不正解。 …

仲間はずれは駄目なこと。

きょうね、ほいくえんでコウタくんがレミちゃんにいじわるしたの。 あら、どうしたの? みんなでブロックであそんでいたら、コウタくんがレミちゃんにだけブロックをかしてあげなかったの。 あらら、ひどいわね。あなたはちゃんと貸してあげたの? うん。ち…

いくつになっても高校生は高校生。

しっかり捕ってよ。 落ち着いて…。 母が叫ぶ。 ほらーっ。 言わんこっちゃない。 母が天を仰ぐ。 縁もゆかりもない県同士の高校野球。 母は冷房の効いた部屋で観ているだけなのに、汗をかいている。 うるさいな。 私はグラスに麦茶を入れる。 だって心配じゃ…

どっちがお化け?

朝起きたらいつもどおり。 部屋にいてもいつもどおり。 眩しい日差しの下、町を歩けばいつもと違う。 この町はこんなにも大きかったのか。 この道はこんなにも広かったのか。 いつもはあんなに音が溢れているのに。 いつも見かけるあの人はいない。 この町は…

一日の長さは不平等。

待ちに待ったこの日。 夢にまで見たこの日。 夢のようなこの日。 文字通り、夢の中で生きている。 やりたいことは山ほどある。 あれもこれもと思い浮かべてはにやけてみる。 起きたばかりで時間はまだたっぷりある。 あれもこれもと想像は膨らむ一方。 小腹…

自動販売機がある本当の理由。

誰にだって誰とも話したくないときはある。 誰にだって誰とも会いたくないときはある。 私はひとりしかいないのに、他にはこんなにたくさん人がいるんだから。 誰とも話したくないのに。 誰とも会いたくないのに。 喉は乾く。 生きていれば、喉が渇く。 悔し…

線の内側にお入りください。

線の内側にお入りください。 アナウンスが流れる。 こっちから向こうはダメ。 電車がやってきて危ないから。 誰かが決めた線がある。 超えたら罰が下る。 線の内側にお入りください。 アナウンスが流れる。 こっちから向こうはダメ。 一歩たりとも超えてはダ…

この世のほとんどは水でできている。

ヒロミは暗い部屋の中で頭を抱える。 うすい壁の向こうから、雨音が聞こえる。 雨が何かにぶつかる音。 雨の上を車が駆け抜ける音。 ヒロミは心拍数が下がっていくのを感じると、ゆっくりと立ち上がって風呂場へと向かった。 捨てるように服を脱ぐ。 いつも…

水でささっとだけじゃ物足りない。

水に流す。 きれいさっぱり。 本当はそうしたい。 何もかも。 嫌なことや思い出したくないことを。 どうしても残ってしまう。 水だけではきれいに流せなくて、残ってしまう。 私の中で、嫌な感情が残ってしまう。 それを出さないように、バレないように。 気…

いかなる理由があろうとも。

割り込み禁止。 みんな、順番通り待っているから。 長い長い行列に、みんなきちんと並んでいる。 ルールを守って。 モラルを守って。 そうやって教えられてきたはず。 小さいころから、まわりの大人と呼ばれる人たちに。 ほとんどの人は、順番を守っている。…

ポイ捨てとゴミ捨て。

あなたのことを悪く言う人がいる。 ああだこうだ、とあなたのいないところで。 きっとあなたの耳にも届いているのに。 良い気なんてしないのに。 あなたは気にしない素振り。 でも私は知っている。 あなたが誰も知らないところでゴミをまとめて捨ててくれて…

帰巣本能が働くとき。

日が暮れてきた。 最近はすっかり日が暮れるのが遅くなって、もうこんな時間。 お腹が空いた。 朝も昼もしっかり食べたのに。 町を歩けば、あちこちから素敵な匂いが漂ってくる。 嗚呼、余計にお腹が空いてくる。 傷がしみる。 いろいろ傷ついた。 今日だけ…

何を見るか、ではなく、どこから見るか。

立ってばかりじゃ見えないものがある。 座っていても見えないものがある。 ジャンプしたら見えるかも。 でも一瞬しか見ることができない。 汚いとか気にしないで。 洋服が汚れることなんてほんの些細なこと。 洗濯すれば済む話。 寝そべってみればいい。 景…

世の中のすべては借り物。

何だって借りることができる。 身につける物から住む所まで。 何だって借りることができる。 お金だって夢だって。 何だって借りることができる。 恋人だって家族だって。 世の中に借りられない物はない。 きっと世の中、借り物だらけ。 誰かが誰かに借りて…

何に迷ったのかはわからない。

「迷子のお知らせを致します」 ピンポンパンポン、というチャイムのあとに女性の声でアナウンスが聞こえてきた。 スピーカーから流れる放送には誰も興味を示さない。 ここにはこんなにたくさんの人がいるのに。 数え切れないほどの人で混雑しているのに。 そ…