雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

歌声、公道、大声。

歌う勇気もないくせに。 道を歩きながら自転車を漕ぎながら歌うあなたは、きっと幸せなのね。 なんの歌を口ずさんでいるのかはわからない。 あなたは音痴だから。 でも、良い曲なのでしょう。 歌いたくなるくらいに。 私だって、ひとりでこっそり口ずさむ歌…

疲れた一日の原因を探る。

ふうっと大きなため息を吐いてソファに沈み込む。 あー疲れた。 独り言を大きめに言う。誰もいないのに。 どうしてこんなに疲れたのか。 いつもより忙しかったわけではない。 むしろいつもより暇だった。 残業をしたわけではない。 きちんと定時に帰宅した。…

口笛、高音、低音。

吹こうと思って吹いているわけではなく、気づけば吹いている。 お気に入りの曲から急に思い出した曲まで、どこから影響を受けたのだろう。 口笛を吹く。 気分が良いわけでもテンションが上がっているわけでもなく。 気づけば、時々口笛を吹いている。 歌うわ…

便利すぎて不便な今日この頃。

今の世の中はとても便利。誰かのおかげで、とても便利。 あなたはそう言う。 僕もそう思う。 例えば、あなたが僕と待ち合わせをしていたとしよう。 約束の時間になっても僕はやってこない。 あなたはあたりを見渡すけれど僕の姿は見えない。 元々、あまり乗…

乾燥、暖房、生まれ変わり。

どこにいてもからだが乾燥する。 いくら暖冬だと言われても、冬はやっぱり寒いから。 出先でも家でも、暖房ばかり。 あったかいのはいいけれど。 どうにもこうにも乾燥してしまう。 乾燥しすぎて、あちこち痒い。 我慢しきれずに痒いところをかいたら。 皮膚…

今さら知ること。

誰にだってあるでしょう。 自分でも知らない過去が。 アルバムを見ながら思う。 そうだったんだ、って。 どこか他人事。 こんな時があったのか。 こんなことがあったのか。 一生懸命してくれていたのに、ごめん。 この時はこうだったんだよ。 あなたの話す仕…

壁一枚突き破る方法はただ一つ。

隣の部屋から笑い声が聞こえてきた。 楽しそう。 こっちの部屋で私はひとり耳をすませる。 途切れながらも会話が聞こえる。 それなのに重要なところは聞こえてこなくて、話の流れがわからない。 また、笑い声。 一瞬、椅子から腰を浮かせる。 けれどもすぐに…

急ぎ、止まり、深呼吸。

寝坊した。 いつもより30分以上も寝過ごした。 急がなくちゃ。 慌てて身支度を整え、家を出て、駅まで走る。 コーヒーすら飲めなかった。 歯磨き粉味のうがいでしか潤せなかった。 のどが渇いた。 こんなに走ったのは久しぶり。 駅に着く。 改札を抜けてホー…

母校の校舎と校庭と。

こんなに小さかったっけ? 灰色の校舎を見て、私は呟く。 こんなに狭かったっけ? 土色の校庭を見て、私は呟く。 私の母校。 もっと大きかった気がするのに。 もっと広かった気がするのに。 無性に見たくなった。 その理由はわかっている。 ここに通っていた…

ストレッチ、手を伸ばす、背中押す。

風呂上りにストレッチ。 伸ばして縮めて、縮めて伸ばして。 少しばかり痛いくらいがちょうどいい。 硬いね。 背後に立った君が僕の背中を押す。 痛い、痛い! 太ももの裏がちぎれそう。 股関節が外れそう。 硬いね。 だからストレッチしてるんだろ。 続けな…

マスクばかりの世界。

世の中マスクで溢れている。 季節柄、致し方ないのかもしれない。 あっちを見ても、こっちを見ても、マスクばかり。 悪いことでは、ない。 マスクはやさしさの象徴。 菌をまき散らさないように。 他人を想う、やさしさの証。 予防のためだとしても。 見知ら…

眠れぬ夜、やること、思うこと。

部屋のあちこちを掃除することに。 理由はただひとつ。 眠れなかったから。 眠れないから布団に入ったのに。 布団に入ったらいつかは眠れると思ったのに。 一向に眠たくならない。 今日は昼過ぎまで寝ちゃったから。 布団で何度も寝返りを打っていると。 カ…

夢や現や泡沫や。

眠れない夜は何もせずに目を閉じるだけ。 いろんなことに思いを巡らす。 そこではいろんなことが起こる。 私の頭の中で巡り巡っているのに。 想定外のことがいくつも起こる。 まるでどこかのことのように。 ずっと目を閉じていても眠れないから。 目を開けて…

歩行速度、平均以上、平均以下。

休みの日とそうじゃない日。 歩くスピードは違っている。 なにかに追われるように。 なにかを追うように。 そうじゃない日は、いつだって急ぎ足。 休みの日は。 うしろ向きに歩いたり、意味もなくスキップしたり。 まわりに誰もいないか確認して、やってみる…

代行サービス、臨時サービス。

代行サービスがちょこちょこ話題になっている。 特に、退社代行サービス。 辞めたい本人の代わりに退社の意思を伝えるらしい。 それだけじゃなく、退社後の面倒な手続きも行ってくれる。 辞めたいけれど、顔を合わせるのが辛い。 辞めることを代行してもらっ…

この世に1本しかない鍵は存在しない。

上着を入れようとコインロッカーへ向かう。 たくさん並んだコインロッカーには、どこにも鍵がささっていない。 つまり、どこも空いていない。 諦めかけたその時。 ひとつだけ扉が少し開いているところがあった。 近寄って見ても、鍵はささっていない。 上手…

道草煙草。

まっすぐ行くことはなくて。 いつでも道草食って遠回り。 目的地まではきっとまだまだ。 長い道のり。 そんなに急いでもしょうがない。 裏道脇道を通って道草を食う。 行き着く場所はわかっている。 時間がどのくらい残っているのかは知らない。 残り僅かじ…

一富士二鷹三茄子。

富士山に登っていて頂上が見えはじめたころ、鷹が空を飛んで鳴いた。その拍子でくわえていた茄子が目の前に落ちてきた。 そんな初夢を見たかった。 由来は知らないけれど、どうやら縁起物らしい。 一富士二鷹三茄子。 生まれてこのかた見たことがない。 ひと…

新年、挨拶、定型文。

今年もよろしくお願いします。 いろんな人に言う。 新年の挨拶だとはわかっているのに。 何を?と思う自分がいる。 今年もよろしくお願いします。 言っても言われても。 会う人すべてに言っていくから。 その疑問雑念を拭えないまま残っている。 何をよろし…

コンビニ、朝、風景。

朝コンビニによる。 仕事がある日は決まって。 いつもとは少し違う風景。 明らかに人が少ない。 いつも駐車場はそこそこ埋まっているのに。 1、2台しか車は見当たらない。 そんな時期がやってきた。 世間はすでに仕事納めが終わっている。 こっち側はまだ納…

ルーティン、縛られ、呪われ。

ルーティンが崩れたらなんだか気持ち悪い。 右足から靴下を履いてしまった。 ホットコーヒー買ったら微糖だった。 鍵をかけたあとドアを引っ張らなかった。 大して変わらないはずなのに、なんだか気持ち悪い。 その場で気づけば修正できるけど。 その場で気…

幸せ、不幸せ、隣合わせ。

ようやく仕事が終わった。 明日は休み。 気になる君をどうやって誘い出すか。 勇気もないのにそんなことばかり考える。 夕食作るのは面倒くさいから今日は外食。 松屋にでも寄って帰ろうか、と思っていたら。 満員で座って待っている人までいる。 家を過ぎて…

鏡、汚れ、落とせない。

テーブルに置いた鏡を見る。 なんだか歳とったな…。 思っていたのと、なにかが違う。 鏡が汚れているからと思ってみても。 鏡を綺麗にする勇気はなかった。 見つめ合っているのに。 ピントは合わずに、ぼやけている。 いつからこんな顔になったのだろう。 あ…

当たり前、隣、有難さ。

いつもそこにあるのに。 こんなときに限って、なかなか出会わない。 どうしてだろうと考える。 いつもはいつも、いつもの生活圏にいるからだ。 大体の配置は把握していて、時間配分も大体わかっている。 多少の誤差はどれも想定内。 気を紛らわすために考え…

影、光、一緒に。

私の真似ばかり。 私が動けばあなたも動く。 私が止まればあなたも止まる。 伸びたり縮んだり。 羨ましいな。 変化が目に見えるなんて。 私はもうほとんど変わらないから。 あなたは私の真似ばかり。 雨の日にはいなくなる。 きっと私が雨の日が嫌いだから。…

ペン、お気に入り、パンパン。

文房具コーナーに行けば。 必ずなにかしら気になるペンと出会う。 家に変えればたくさんペンがあるのに。 まだ使えるペンがいっぱいあるのに。 どうしても見てしまう。 見ていると、やっぱり欲しくなる。 お気に入りのペンと手に取って、使っている自分を想…

不眠、夢見、企み。

眠れぬ夜は。 時間が経つのが早い。 もうこんな時間。 何度も時計に目をやる。 明日は早く起きなくちゃいけないのに。 そう思えば思うほど眠れなくなる。 今眠れば、何時間眠れる。 逆算ばかりで、残り時間は減るばかり。 部屋は真っ暗。 眠るギリギリまでな…

左右、非対称、不均衡。

アシンメトリー。 こっちとあっち。 見ているものと見られているもの。 どこが境目なのかは知らないけれど。 感情と思考。 私が出すものとあなたが受け取るもの。 どれもアシンメトリー。 シンメトリーなんてない。 身の回りのすべてがアシンメトリーだと知…

服、綺麗、畳めない。

部屋に脱ぎ捨てられた、しわくちゃの服。 あなたの抜け殻みたい。 黒いロンT。 細身のあなたはタイトな服を好む。 もう少しごはん食べなよ。 そうは言っても小食だからしょうがない。 甘いものはたくさん食べるのに。 黒いロンTの、袖がピローンとなって変…

近道、回り道、通る道。

近所のコンビニ。 昔からの行きつけ。 毎日のように通っていて。 店内を歩くルートも決まっていて。 目につく商品も大体決まっていて。 レジに行けば、なにも言わなくてもセブンスターが用意されていて。 習慣になりすぎて。 なにも考えていないのと同様。 …