近道、回り道、通る道。
近所のコンビニ。
昔からの行きつけ。
毎日のように通っていて。
店内を歩くルートも決まっていて。
目につく商品も大体決まっていて。
レジに行けば、なにも言わなくてもセブンスターが用意されていて。
習慣になりすぎて。
なにも考えていないのと同様。
もちろん考えてはいるけれど。
考えていないのと同じくらい、狭い中。
今は。
少しだけ幅が広がった。
あのころに比べたら、随分広くなったもんだ。
行きつけのコンビニは変わらない。
変わったのは店員の顔ぶれと私の視野と歩幅。
店員さんは何人も入れ替わり。
視野は広がり、歩幅は狭くなった。
立ち寄る回数は、あのころに比べたら幾分か減ったけれど。
コンビニに行けば。
いつもの好みだけじゃなく。
君が好きそうなものにも目を配る。
新商品はチェックするようになった。
今まで通らなかったルートを通るようになった。
君が好きそうなものをかごに入れる。
喜んでくれたり、そうじゃなかったり。
未だに君の好みを把握できていない。
君に見せなきゃ、答えは出ない。
自分のものを選ぶより時間がかかる。
そのことに気づいたとき。
なにかのためにいつもより多めに買ってしまう。
そのことに気づいたとき。
君の顔を思い浮かべてしまう。
そのことに気づいたとき。
なんだか、ひとりで笑ってしまう。
まわりの人にバレないように。
ガラスに映る自分を見て。
笑っている自分に気づいて。
背中を丸めて、息を潜めて。
呼吸を整えて、レジへと向かう。