雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

のど元過ぎて逆流しそう。

電車に揺られる。 ガタゴト、ゴトガタ。 心地良い、振動とリズム。 睡魔に襲われる。 気持ち良く眠れそう。 完全に身を委ねたい。 でも、寝ちゃダメだ。 寝たらきっと、終点まで辿り着く。 経験上、きっと。 少しでも気を抜いたら、まぶたが閉じそう。 がん…

自転車、全力、荒い呼吸。

学生服を着た男の子が、上半身を左右に激しく揺らしながら自転車を漕いでいる。 上り坂ではないのに。 きっと、とても急いでいるのだろう。 自転車は颯爽と私を追い抜いていく。 私は彼の後ろ姿を見ながら、目を細めた。 私の前にはスーツ姿の男性ふたりが並…

カーナビ、方向音痴、2分の1。

自分が行く道は自分で決める。 そんなカッコつけて。 どうせ何かの漫画の影響でしょ。 方向音痴のくせに。 案の定、道に迷った。 方向音痴のくせに、右折か左折かの二択ですら間違うんだから救いようがない。 ここ、どこよ。 こういう知らない道を運転するの…

水たまり、滑る車、踊る私。

雨上がりの車道。 ハンドルを握るあなたと楽しくおしゃべり。 夕べはけっこう雨が降っていたから、道路には大小様々な水たまりが。 シャーシャーと音をたてて。 車は滑るように進んでいく。 いつも安全運転なあなた。 私を乗せると、さらに顕著。 スピードは…

駅、人込み、ひとりぼっち。

駅が人でごった返している。 みんな大きな荷物を抱えて笑っている。 行き先はみんなバラバラなはずなのに。 それぞれ知り合いでもないのに。 妙な一体感はどこから来ているのか。 大きな塊が動いていく。 私はひとり手ぶらで小さな穴を開けるように進む。 心…

理想の自分は反面教師に習う。

ああいう人にはなりたくないな。 車線変更をくりかえして進む車を見ながらあなたは言う。 ほら。信号のタイミングで結局これくらいしか違わないんだから。 ウインカーを駆使した車は、私たちの車の2台前で停まった。 まあね。でも信号のタイミングで凄く差が…

臭いものをもう一度嗅ぎたくなるのとは次元が違う。

電車に乗ったら、そこそこ満員。 立ったまま吊り革につかまる。 電車に揺られていたら、どこからかいい匂いがした。 いい匂いだし、懐かしい匂い。 どこから漂っているのか、視線だけで探す。 首を振りすぎると怪しいから。 しばらくして気づく。 視線だけで…

負けられない戦いはそこらじゅうにある。

陽が傾きはじめた。 あんなに低くなったのに、まだこんな時間。 昼は短く、夜は長くなる一方。 橙に染まった空のはしっこを見ながら自転車を漕ぐ。 風は冷たい。 我慢できないほどではないけれど。 ハンドルから右手を離し、ポケットに入れる。 ゆっくり自転…

朝のイオンを通り抜けて。

電車で仕事へ向かう。 いつもは車だけど、今日は電車。 バッグに入れた文庫本を取り出して。 立ったまま電車に揺られる。 いつもと景色も時間の流れも違う。 いつも通る道を上から眺めるのも、悪くない。 電車にはたくさんの人がたくさんいて。 はじめて見る…

すべての出来事を確率で表せばどれもなかなかの数字。

車で信号待ちしていたら、左車線に同じ車が止まった。 色まで同じ。 なんだか嬉しいような、恥ずかしいような。 助手席からそれとなくちらりと目線をやると、隣の運転席に見覚えのある顔があった。 元彼だ。 向こうはまだ私に気づいていない。 私の隣でハン…

伝わらない気持ちは数知れず。

ユウジはアクセルから足を離し、スピードを落とす。 前方にできたスペースに、左車線から車が入ってきた。 やさしいね。 助手席でスマホ片手にアイナが言う。 そう?別に急いでいるわけじゃないしね。 ユウジがそう言うと、前方に入った車がハザードランプを…

足を踏み出すタイミング。

通勤ラッシュの駅。 数え切れないほどの人が右に行ったり左に行ったり。 スグルはホームに立つ。 一本乗り遅れたか。 スグルは腕時計に目をやり、舌打ちする。 それでもすぐに次の電車がやってくる。 スグルのうしろには、すでに何人もの列ができていた。 ホ…

運転しないと車に酔いがち。

助手席って酔いやすいんだよね。 リクは窓を開ける。 わかる。私もそう。 ハンドルを両手でしっかり握りながらマオは頷く。 運転替わってよ。 やだ。 うねる山道をふたりが乗った車が通っていく。 酔い止め薬、一応買っておいたけど飲む? マオはダッシュボ…

平行じゃない限りいつか交わる。

信号待ちの斜め上を横切る高架。 列車が光りながら走っていく。 駅から出てすぐだからか、速度はゆっくり。 列車の中に見える人々は皆、うつむいている。 斜めに射し込む陽が、くたびれた人々を照らす。 誰も気にしていないようだ。 スポットライトを照らさ…

飲み込まれる。

飲み込まれていく。 抗うことなく。 むしろ、少しでも早く、と。 順番待ちは、もうそろそろ飽きるころ。 いっそ、楽にしておくれ。 ジワリジワリ、近づいていく。 赤く染まったものが目の前にいくつも流れている。 飲み込まれるように。 吸い込まれるように…

エコなエネルギー補給。

オーライ、オーライ。 バックオーライ。 ストーップ! いらっしゃいませ!今日は何にしますか? 若くて元気な店員が駆け寄ってくる。 レギュラー満タンで。 タクミは窓を開けながら言う。 はい!いつもありがとうございます!では、これを。 店員はそう言う…

色褪せたら無事卒業。

若い芽が出たばかり。 ようやく陽の下に出られる。 ようやく月の明かりを浴びれる。 種まいて、水あげて。 じっと暗闇で耐えてきた。 思ったよりも成長しなくて。 思ったよりも時間がかかった。 そう思えば、温かく見守れる。 ようやく芽吹いた葉っぱ。 あん…

荷ほどきの後の片づけは大変。

目の前にトラックがいる。 大きなコンテナを乗せて。 厳重に鍵が掛けられている。 何が入っているの? きらりと光る荷台に目を向けて細める。 誰のところへ行くの? 所々くたびれた荷台に口をほころばせる。 またトラックがやってきた。 さっきのトラックよ…

時は常に動いている。

ユミはウィンドウガラスに両手と顔をくっつけている。 汚れるよ。 ヨシハルは低い声で言う。 目の前を走る大通りにはいくつもの車が行き来していて、騒音が絶えることはない。 汚れるよ。 ヨシハルは動かないユミに、もう少しだけ大きな声で言った。 聞こえ…

好き嫌いは表裏一体。

渋滞は嫌い。 好きな人なんて、きっといない。 目の前に並べられたテールランプの列。 やっと消えたと思ってもすぐに点く。 点いたと思ったらなかなか消えない。 同じ景色ばかり見せられて、時間だけが過ぎていく。 テールランプの明かりに包まれている人達…

距離感と思いやりは比例する。

朝の通勤ラッシュ。 バス停には長い行列ができている。 並んでいる人たちは、スマホを見たり、新聞を読んだり、音楽を聴いたり、本を読んだり。 誰もが誰とも話していない。 これだけ人がいるのに、それぞれがそれぞれの時間を成している。 公共の場所だけど…

傷ついたら癒せばいい。

車をこすった。 右側のうしろ側。 内輪差。 車幅感覚がイマイチ。 いけると思ったのに。 どうしても最短距離のコースを選択してしまう。 ギリギリを攻めてしまう。 余裕がないせいなのか。 だから私はいつも傷だらけ。 生傷が絶えない。 机のあいだをすり抜…

比較的比較しやすいタイプ。

遊園地にある立て看板。 この看板より身長が低い子はこの乗り物に乗れませんよ、ってやつ。 悲しそうな顔した男の子が、看板の横に立っている。 現実を受け入れられないのだろう。 さっきダメだったのに、もう一度チャレンジしている。 さっきは何かが間違っ…

現実逃避は小旅行。

タイムマシンがあったらな。 ついついそんなことを思ってしまう。 タイムマシンがあったなら。 どんな形をしているのだろう。 どんな機械なのだろう。 どんな理屈で成り立っているのだろう。 そんなことを思いながら、いつだって私たちはタイムマシンに乗っ…

世の中良い人はそこそこいる。

信号が青に変わる。 赤信号で止まっていた車が一斉に動き出す。 そして歩行者も。 左折しようとするがすぐそこに横断歩道があるので、歩行者がいなくなるまで待つ。 ウインカーの音が、カチカチカチ、と車の中に響く。 歩行者は途切れることなく横断歩道を渡…

正義の味方はどこにいる?

立場によって正義は変わる。 ドフラミンゴの言う通りだ。 正義なんて大きなことは私には言えないし、正義とは違うけれど、見方は確かに変わる。 ルフィは良い奴だし、麦わらの一味も良い奴ら。 でも彼らは、海賊、なんだ。 海賊は大多数の人からすれば、悪。…