のど元過ぎて逆流しそう。
電車に揺られる。
ガタゴト、ゴトガタ。
心地良い、振動とリズム。
睡魔に襲われる。
気持ち良く眠れそう。
完全に身を委ねたい。
でも、寝ちゃダメだ。
寝たらきっと、終点まで辿り着く。
経験上、きっと。
少しでも気を抜いたら、まぶたが閉じそう。
がんばれ。
でも経験上、わかっている。
きっと気を抜く。
そしてやっぱり、気を抜いた。
眠ってしまった。
そして、目が覚めた。
どのくらい時間が経ったのか。
体感では、ほんの一瞬。
緊張しながら流れる景色に目を細める。
アナウンスに耳をすます。
終点までは行っていない。
降りる駅までも来ていない。
奇跡だ。
よかった。
そんな思いはすぐに消えた。
気持ち悪い。
あんなに気持ち良かったのが嘘みたいに、気持ち悪い。
吐きそう。
ここではダメだ。
まだ電車の中。
一点を見つめて集中。
降りる駅まではまだいくつもあるけれど。
扉が開くと、電車から降りた。
トイレまであと少し。
我慢。
急ぐけれど、急いじゃダメ。
刺激を与えすぎないように歩く。
振動とリズムが気持ち悪い。
もう少しも眠たくない。
早く楽になりたい。
さっきまであんなに気持ち良かったのに。
何度も経験しているのに。
お酒は飲んでいるときが一番。
飲んだあと気持ち良いのは一瞬。
のど元過ぎて、逆流しそう。