雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

ウソツキキツツキ。

1羽のキツツキがいた。 名前をコンと言う。 お父さんとお母さん。 3羽で仲良く暮らしていた。 大きな木を住み家として。 毎日、楽しく暮らしていた。 どこにでもある。 どこにでもいる。 普通の家族。 ただひとつ。 このキツツキ一家には不思議な癖があった…

踊る、落ち葉、君と僕。

冷たい風が吹き抜ける。 道端の落ち葉たちが踊っている。 くるくる、さわさわ。 黄色や茶色、赤に緑も。 くるくる回って。 そんなに回って、何色になるのだろう。 手が冷たい、からだが冷える。 一緒に踊ろう。 君と一緒に踊りたい。 手をつなぎ、足を絡ませ…

知らない言葉のほうが多い。

男と女がそれぞれ犬の散歩をしている。 北から男が、南から女が歩いてくる。 ふたりが交わるとき、お互いの犬が吠えた。 ワンワン、キャンキャン。 こらっ。 ふたりが同時に言う。 2匹の犬は尻尾を振って、吠えながら、距離を近づける。 2匹の犬が絡み合おう…

誰かの仕業でいつもグラグラ。

ライオンがシマウマを追いかけている。 最近、獲物を狩れないでいるらしい。 腹ペコな家族、仲間のために。 生きるために。 がんばれ。 いろいろな駆け引きをしながら、シマウマを狙い、追いかける。 早く。 気づかれないように。 早く。 気づけばライオン目…

犬の手も人の手にしたい。

ああ、忙しい。 ルイは汗だくになりながら走り回っている。 ああ、忙しい。 ルイは誰に言うわけでもなく言う。 猫の手も借りたい、ってこういうことね。 ルイは手も足も頭もフル回転させている。 ああ、忙しい。猫の手も借りたいわ。 ルイは再び、言う。 そ…

温もりの森。

あなたを羨ましく思うけれど、あなたのようにはなれないと知っている。 陽が射せば、陰を作る。 雨が降れば、雨をしのげる。 大きくて、強くて、温かくて。 あなたが気づいているかは知らないけれど。 誰かを安心させる力を持っている。 私にはないものばか…

無名も悪名も同じ町にいる。

町を歩けばいろんな花が咲いている。 思ったよりも咲いている。 きっとみんな花が好き。 だからみんな花を植えるんだ。 君もそうだろ? きれいね。 君は色とりどりの花を見て言う。 赤も黄も橙も紫も白も。 何て言う花なのだろう。 俺はどれも名前を知らない…

諸説ありすぎて正解がわからない。

フラミンゴが片足で立っている理由って知ってる? サユリはスマホ片手にタクマに訊く。 知らないよ、そんなこと。 タクマはぶっきらぼうに答える。 片足で立つことで、冷たい水に長時間立っていられるようにするためだって。 サユリはスマホを覗き込んで読み…

枯れ木に花を咲かせましょう。

枯れ木に花を咲かせましょう。 そう思っても。 何の知識もないから。 水をあげるくらいしかできない。 それだけじゃ、きっと花は咲かない。 もっといろんなものが必要。 だからいろいろ調べないと。 この枯れ木が何の木なのか知らない。 どんな花を咲かせる…