雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

諸説ありすぎて正解がわからない。

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フラミンゴが片足で立っている理由って知ってる?

サユリはスマホ片手にタクマに訊く。

 

知らないよ、そんなこと。

タクマはぶっきらぼうに答える。

 

片足で立つことで、冷たい水に長時間立っていられるようにするためだって。

サユリはスマホを覗き込んで読み上げる。

 

動物の知恵か。

本能が成せる技なのか。

 

タクマはサユリの言葉を聞いて、急に態度を変える。

 

片足だけ水に突っ込むことで冷たさを軽減できるっていうのなら、使えるな。

タクマは真剣な顔して言う。

 

なにに?

サユリはタクマに問う。

 

半分だけ突っ込むことでなにかが軽減されるのなら、嫌なことに半分だけ突っ込んだら嫌な思いが軽減するっていうことだろ?

タクマは真面目な顔と声で言う。

 

嫌なことってなに?

 

勉強とかバイトとか。あるだろ、いろいろ。

 

あるけど…。半分ってなに?

 

嫌だなって思うとき片足で立つとか、片手だけ出すとか…。

タクマは宙を見つめる。

 

気持ちを半分だけ置いておくとか?

サユリは笑いながら言う。

 

それ、いいね。

タクマは手をパンッと叩く。

 

あっ待って。フラミンゴが片足で立つ理由が、もうひとつあった。

サユリはスマホを覗き込む。

 

なに?

タクマもサユリのスマホを覗き込む。

 

片足で立っているほうが楽だから、だって。

サユリはタクマを見る。

 

えっ?

タクマは片足を上げて、すぐに下した。

 

あーあ。やっぱ、無理か。

タクマはため息を大きく吐き出す。

 

しっかり両足で立ったほうが歩きやすいよ、私たちは。

サユリはタクマの肩をポンッと叩いた。