雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

エコなエネルギー補給。

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オーライ、オーライ。

バックオーライ。

ストーップ!

 

いらっしゃいませ!今日は何にしますか?

若くて元気な店員が駆け寄ってくる。

 

レギュラー満タンで。

タクミは窓を開けながら言う。

 

はい!いつもありがとうございます!では、これを。

店員はそう言うと、タオルを一枚、タクミに渡す。

 

そのまま黒いケーブルを引っ張ってきて、タクミのからだに突き刺す。

 

不思議と痛くはない。

 

タクミはシートを倒して、目を閉じる。

 

真っ暗だったまぶたの裏に、見知らぬ人が次から次へと出てくる。

 

誰もが泣いて、落ち込んで、それでも一歩ずつ踏み出していく。

年齢も性別も人種も。

職業も境遇も価値観も。

 

すべてタクミとは異なる人々のそれぞれのストーリー。

 

タクミは涙し、拳を握り、呟き、笑う。

タオルをふんだんに使って、拭い、握りしめ、振り回した。

 

映像が終わった。

 

どうもありがとうございました!

店員が駆け寄ってくる。

 

ああ、ありがとう。これでまた頑張れるよ。

タクミはそう言い、タオルを手渡す。

 

そう言っていただけると、こっちもうれしいです。

元気な店員は大きく笑う。

 

君を見ているだけでも頑張れる気がするけど。

タクミは料金を支払う。

 

それ、うれしいです!

店員はタクミにお釣りを返しながら笑う。

 

頑張っている人を見ると、元気をもらえるからね。頑張っている人はきっとそこらじゅうにたくさんいるんだろうけど、ここはストーリーがわかりやすいから。すごいアイデアだよね。頑張っている人をエネルギーにするなんて。

 

そうですね。僕も、たくさんエネルギーもらってますから。

 

だからそんなに元気なんだ。

 

はい!もっと頑張ります!あと、ハイオクもたくさん用意してますので、次はそっちもお願いします!

店員は深くお辞儀をする。

 

商売上手だね。じゃあ、次はお願いするよ。

タクミは手を振る。

 

ありがとうございました!

店員は再び、深くお辞儀をする。

 

タクミは窓を閉め、アクセルを踏む。

 

今日がハイオクでも良かったかな。ちょっと物足りないな。

タクミは呟く。

 

タクミはアクセルを踏みながら、まわりを見渡す。

 

頑張っている人を探すために。

タクミ自身のために。