飲み込まれる。
飲み込まれていく。
抗うことなく。
むしろ、少しでも早く、と。
順番待ちは、もうそろそろ飽きるころ。
いっそ、楽にしておくれ。
ジワリジワリ、近づいていく。
赤く染まったものが目の前にいくつも流れている。
飲み込まれるように。
吸い込まれるように。
笑っている者も。
疲れ果てた者も。
目をこする者も。
いろんな表情を見せながら、思いは誰もが同じ。
楽にしてくれ。
早く飲み込んでおくれ。
ようやく蛇の姿が見えた。
巨大な蛇。
誰も抗うことなく、飲み込まれていく。
我先にと、吸い込まれていく。
それでもまだまだ、目の前は赤く染まっている。
とうとう私の順番。
赤く染まったまま飲み込まれる。
そして、そのまま吐き出される。
吐き出されると、またすぐ次の蛇が見えてきた。
赤く染まった道を、抗うことなく進んでいく。
いつまで続くのか。
どこまで続くのか。
ラジオをつける。
25㎞の渋滞、だそうだ。
そろそろトイレの心配をしなくちゃ。
手に持ったお茶を、飲むことなくホルダーに戻した。