この世に1本しかない鍵は存在しない。
上着を入れようとコインロッカーへ向かう。
たくさん並んだコインロッカーには、どこにも鍵がささっていない。
つまり、どこも空いていない。
諦めかけたその時。
ひとつだけ扉が少し開いているところがあった。
近寄って見ても、鍵はささっていない。
上手く鍵がささらなかったのか。
ゆっくり扉を開けてみる。
中には。
鍵が1本だけ入っていた。
その鍵には小さなプレートがついていて、番号が刻まれている。
このコインロッカーと同じ番号が。
まわりを見渡すが、誰もいない。
誰かの途中というわけではなさそうだ。
手を伸ばして鍵を手に取る。
鍵穴に入れるとスムーズに入った。
やはり、このコインロッカーの鍵だった。
500円玉入れて鍵かけて、中身を取り出すときに鍵をさせば500円玉が戻ってくるタイプ。
財布から500円玉を取り出し、上着を入れて鍵を閉めた。
空いていて良かった。
でも、気になる。
コインロッカーの中に鍵が1本。
いたずらか嫌がらせか。
でも。
鍵をささないと扉は開かない。
鍵を抜いたら扉は閉まらない。
扉が閉まらないと鍵は抜けない。
謎は残ったまま。
一度コインロッカーから離れるが、謎が頭をよぎって一旦戻る。
ちゃんと鍵がかかっているか何度も扉を引っ張った。