鏡、汚れ、落とせない。
テーブルに置いた鏡を見る。
なんだか歳とったな…。
思っていたのと、なにかが違う。
鏡が汚れているからと思ってみても。
鏡を綺麗にする勇気はなかった。
見つめ合っているのに。
ピントは合わずに、ぼやけている。
いつからこんな顔になったのだろう。
あの日を境に劇的に変わった。
そんな記憶はないのに。
記憶に残った顔とは違っている。
床に転がった写真を手に取る。
今とは違う私の顔。
思っていたのとは、やっぱり少し違う。
こんなんだったけ?
隣に写るあいつの顔は、こんなものだったと納得できるのに。
あいつと私。
肩と肩が触れている部分で破ろうとするけれど。
途中でやめて、くしゃくしゃにして丸めてゴミ箱へ投げた。
ゴミ箱のへりに当たって、弾んで、床へと転がる。
チェッと舌打ちをする。
テーブルに置いた汚れた鏡をもう一度見る。
チェッと舌打ちする。
汚れもこの顔も。
見なかったことにしよう。
今は、今だけは、気づかなかったことにしよう。
鏡をテーブルの上に伏せて。
誰にも見られていないのに、顔も伏せた。