説教、不可避、雨の声。
雨が止まない。
傘を持っていないから濡れてばかり。
どうして傘を持っていないの?
誰かに怒られた気がした。
まわりを見ても誰とも目が合わないのに。
声だけがする。
幻聴か。
怒られすぎて、落ち込みすぎて。
上司に怒られた。
死ぬほど怒られた。
彼女に怒られた。
死ぬほど怒られた。
これだけ怒られるってことは。
どれほどの落ち度が俺にはあるのか。
自覚は、ある。
心当たりも、ある。
これだけ怒られれば。
雨音だって怒っているように聞こえる。
癒しなんて微塵もない。
朝は降っていなかったけれど。
帰るころには雨が降るってテレビで誰かが言っていた。
何人か言っていた。
それなのに雨に濡れることを不満に思うのは。
きっと俺に原因がある。
ゆっくり歩いたら、たくさん濡れるし。
走っても、結局一緒だし。
はしっこを歩いているのに濡れる。
顔を上げたら雨粒がゆっくり落ちてくる。
避けようと試みるけれど、濡れる一方。
避けきれないものはいくらでもある。
濡れた顔を手で拭く。
少しだけ小走りで家路に向かった。