ストレッチ、手を伸ばす、背中押す。
風呂上りにストレッチ。
伸ばして縮めて、縮めて伸ばして。
少しばかり痛いくらいがちょうどいい。
硬いね。
背後に立った君が僕の背中を押す。
痛い、痛い!
太ももの裏がちぎれそう。
股関節が外れそう。
硬いね。
だからストレッチしてるんだろ。
続けなくちゃ意味ないよ。
わかってる。
それにしても本当にからだが硬い。
自分でも嫌になるほどに。
すぐそこに手が届かない。
もっと柔らかくなれば届くのに。
からだを倒しても、思い切り手を伸ばしても。
すぐそこなのに、届かない。
ただ、痛いだけ。
転職の方はどう?
君はゆっくりと僕の背中を押す。さっきほど痛くはない。
うーん。なんかいろいろ考えてるんだけど…。
踏ん切りつかない?
…うん、まあ。
あなた、いろいろ考えすぎなのよ。もっと柔らかくいかなくちゃ。
…。
どうせ、私たちのことばかり考えてるんでしょ?
……。
大丈夫よ。私も働いているし、どうにでもなる。
君は僕の背中を強く押す。
痛い、痛い!
強く押されても、手は届かない。
急に柔らかくなんてならないのは、わかっている。
君が言うように、続けないと意味がないことも。
そこに手が届くまで。
痛い、痛い!
もうそんなに強く押してないよ。
痛いんだよ。硬いから。
もう痛くないのに。
痛みのせいにしたかった。
涙が出てきたことを、君にバレないように。
君はもう全然押していないのに。
あー痛かった。
僕は大袈裟に、そう言った。