半透明人間。
手を挙げてもタクシーは停まらず。
自動ドアの前に立っても開かない。
店員さんに声をかけても誰も来ず。
「びっくりした!」とよく驚かれる。
それなのに。
道を歩いて肩がぶつかったら舌打ちされたり睨まれたり。
私は見えているのか見えていないのか。
中途半端な半透明人間。
見てほしいときに見られなくて。
見られたくないときに見られる。
まったくもって不便。
良いこととは目が合わず。
悪いこととは目が合う。
人生そんなもんだよ、だなんて。
思いたくもないし信じたくもない。
陽が傾いてきて私の影が伸びてきた。
伸びてきているのに、どこか縮こまっているような気がした。
肩を広げて、胸を張る。
少しだけ影が伸びた。
顎を上げて、目を開く。
なんだかやたらと夕陽が眩しく思えた。