夢や現や泡沫や。
眠れない夜は何もせずに目を閉じるだけ。
いろんなことに思いを巡らす。
そこではいろんなことが起こる。
私の頭の中で巡り巡っているのに。
想定外のことがいくつも起こる。
まるでどこかのことのように。
ずっと目を閉じていても眠れないから。
目を開けて布団から出る。
部屋の明かりもテレビもスマホも真っ暗なまま。
小さな窓にかかったオフホワイトのカーテンを開ける。
今夜は月が見えない。
車が数台、時折走り抜ける。
コートを羽織って外へ出る。
息が白く広がってどこかに消える。
まるでどこかのことのように。
眠れない私が眠った町を歩く。
それでも完全に眠っているわけではない。
ちらほらと明かりが見える。
動く人影も、走る車も。
眠れないなんて贅沢ね。
こんな時間でもこんなに働いている人はいるのに。
家に戻って布団に入る。
吐き出した息のように、どこかへ消えることなんてできなかったから。
まるでどこかのことのよう。
どこかに小さな穴が開いていて。
どこからか空気が入ったとして。
小さな泡がいくつも現れる。
私たちは本能のままその泡に寄っていく。
その泡すら夢か現かわからない。
わからないのに、寄ってしまう。
今夜はカーテンを開けたまま眠ろう。
目を閉じたら、どこからか泡の音が聞こえた。