雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

夢や現や泡沫や。

f:id:touou:20200124211529j:plain

 

眠れない夜は何もせずに目を閉じるだけ。

 

いろんなことに思いを巡らす。

そこではいろんなことが起こる。

 

私の頭の中で巡り巡っているのに。

想定外のことがいくつも起こる。

 

まるでどこかのことのように。

 

ずっと目を閉じていても眠れないから。

目を開けて布団から出る。

 

部屋の明かりもテレビもスマホも真っ暗なまま。

小さな窓にかかったオフホワイトのカーテンを開ける。

 

今夜は月が見えない。

車が数台、時折走り抜ける。

 

コートを羽織って外へ出る。

息が白く広がってどこかに消える。

 

まるでどこかのことのように。

 

眠れない私が眠った町を歩く。

それでも完全に眠っているわけではない。

 

ちらほらと明かりが見える。

動く人影も、走る車も。

 

眠れないなんて贅沢ね。

こんな時間でもこんなに働いている人はいるのに。

 

家に戻って布団に入る。

吐き出した息のように、どこかへ消えることなんてできなかったから。

 

まるでどこかのことのよう。

 

どこかに小さな穴が開いていて。

どこからか空気が入ったとして。

小さな泡がいくつも現れる。

私たちは本能のままその泡に寄っていく。

 

その泡すら夢か現かわからない。

わからないのに、寄ってしまう。

 

今夜はカーテンを開けたまま眠ろう。

 

目を閉じたら、どこからか泡の音が聞こえた。