何もしなかったら何も変わらない。
やかんが泣く。
ピーピー泣いている。
放っておいたら泣き続ける。
泣き声が大きくなるだけ。
湯気がもくもくと出る。
湯気が広がる。
どんどん、どんどん、広がっていく。
あたりは真っ白。
向こう側が見えない。
嗚呼。
この湯気の中から誰か出てくればいいのに。
何かしらの願いを叶えてくれる誰かが。
そんなはずはないけれど。
願いは自分で叶えるしかないって、学んできたから。
でも、もし、今、願うなら。
とりあえずコンロの火を止めてほしい。
やかんが泣いてうるさいから。
そんなはずはないから。
仕方なく立ちあがる。
コンロの火を消すために。
火を止めたら、音がしぼんでいった。
湯気はあたりをふわふわ彷徨う。
誰か現れるか。
少しずつ、晴れていく。
願いを叶えてくれる、誰かが。
そんなはずはないから。
湯気が消えたら、いつもどおり。
誰も現れない。
仕方なく、カップラーメンのふたを開ける。
嗚呼。
おなかが空いた。
どんなときでもおなかは空く。
泣きたいのはこっちのほうだよ。
それだけ泣けるのが、羨ましい。
もし、今、願うなら。
すぐに3分後になってほしい。