雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

日記のようなもの③

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通りがかりにカフェに入る。

おしゃれ感満載のカフェ。

 

ここに来たかったわけではない。

たまたま見つけただけ。

 

歩き疲れたと同時にやたらとのどが渇いたから。

まわりには何もなくて、ちょうど見えるところにあっただけ。

 

運命なんて大それたものじゃないし、運命とも思っていない。

偶々。

 

店に入ると、他に誰も客はいなかった。

昼食時でも夕食時でもない、すきまの時間。

 

お好きな席にどうぞ。

透き通るようなおしゃれな店を少しも濁さないおしゃれな店員さんが笑顔で言う。

 

店内を見渡すと、左側には大きなガラスが一面に張られている。

その横にはいくつかのテーブルとイス。

もれなく、おしゃれ。

 

柔らかい陽が射し込む。

気持ちよさそう。

 

それでも反対側の奥まった席に座る。

それでもテーブルとイスはおしゃれ。

 

メニューを開くと、あまり手にすることのないアイテムがズラリ。

一応、隅々まで目を通す。

 

アイスコーヒーください。

 

そこまでチャレンジ精神豊富じゃない。

豊富だったら、すでにこういうお店に足を運んでいる。

 

窓際になんて座れない。

こんなに大きなガラス張り。

 

外が見えるということは。

外から見られるということ。

それだけは忘れてはいけない。

 

おしゃれなカフェでアイスコーヒーを飲む。

窓側は無理でも奥で飲む。

思ったよりも味わえる。

雰囲気に飲まれることなく。

 

ああ、普通だ。

それが、なぜだか、どこかうれしい。

 

窓側に座っていたら、もう少し苦かったかもしれない。