流れに乗っているのに流れに逆らっている。
ふらふら煙が漂う。
細いものから太いものまで。
小さく広がって、消えていく。
風に乗って、消えていく。
どこまで行くのか見届けても。
なにかにかき消されるよう、すぐにどこかへ消えてしまう。
肩をすぼめて、背中を丸めて。
地球は丸いって聞いているのに、すみっこへと寄っていく。
目を細めても、見える景色は変わらない。
ふらふら。
ゆらゆら。
どこへ行くのだろう。
このまま煙のように消えてしまいそう。
一歩もここから動いていないのに。
風はいつだって吹いている。
風がないように思っていても、きっと風は流れている。
気づいていないだけなんだ。
煙の行方に目をこらす。
風に乗った煙の行方を。
煙が向かう方に風が流れている。
時代という風が流れている。
風が吹いてくる方へと目を向ける。
たくさんの人々が行き交っている。
ここはまだ大丈夫。
ここはまだ認められている。
もう少し風が強くなったら、ここも吹き飛ばされるだろう。
たばこの煙は消えていく。
小さく広がって、すぐに消えていく。
何かにかき消されるように。
風に乗って、消されていく。
風の吹く方に煙を吐き出したら。
全部、自分にかかって、消えた。