雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

メイク落としのベストタイミング。

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素顔は見せたくないから。

ヒーローでもないのに、マスクをつける。

 

誰にもバレないよう、見られないよう。

素顔を隠す。

 

そんな毎日。

気を遣ったまま疲れ果てて、顔を隠したまま寝てしまう。

 

今日のメイク、なんだかいいね。

あら、ありがとう。

でも勘違いしないで。

あなたのためにメイクしているわけじゃない。

私のため。

 

外面は少しでも良くしとかなくちゃ。

あなたのためじゃなく、私のために。

 

だからマスクをつける。

メイクをする。

仮面をつける。

 

息苦しい。

我慢するしかない。

ヒーローなんかじゃないから。

 

それなのに。

正体を明かすわけにはいかない。

 

みんな笑っている。

誰もが泣いている。

本当のことはなにも知らない。

正体も知らない。

 

マスクつけて。

メイクして。

仮面をつけて。

なにかから、逃げて隠れて。

 

そのまま寝てしまう前に。

残った体力と気力を振り絞って、メイクを落とす。

少しも残さず。

少しも持ち越さないように。

 

しばしの休息。

本当の休息。

 

さあ、休もう。

そんなときに限って。

小腹がすくし、お酒を飲みたくなる。

 

そんなときに限って。

家になにもない。

 

我慢できない。

外に出るしかない。

 

マスクをつけて。

仮面をつけて。

 

メイクはさすがにしないけど。

 

本当の休息は、しばし我慢したあとで。

 

玄関を開ける。

隠れながら、明かりを避けるように歩いていく。