雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

夢の在処はあちこちに。

毎日忙しい。 あれもこれもとやることだらけ。 毎日疲れている。 家に帰ってまったり過ごすなんて、久しくやっていない。 まるで夢のような話。 仕事に追われる。 勉強に追われる。 それでも頑張る。 叶えたい夢があるから。 一日たりとも無駄にはできない。…

夜更かしは自分へのご褒美。

眠れないわけではなく、眠らない。 今日は夜更かしすると決めたから。 時計の針は進む。 そのたび、町は静かになる。 夜更かしすることは決めているけど、何をするかは決めていない。 決めているとすれば、何もしないと決めたことくらい。 ただ、町の中を歩…

1回休んでふりだしに戻る。

疲れ果てて帰ってきたのに。 あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ。 少しでも早く寝たいのに。 あれも気になる、これも気になる。 とりあえず、風呂に入ろう。 いつもなら、ここからダラダラ時間が過ぎるけど。 今日はとりあえず、風呂に入ろう。 温かいシャ…

はじまりの終わりと終わりのはじまり。

鐘の音が聞こえたら、はじまりと終わりの合図。 私たちはそうやって育ってきたから。 だから今だって鐘の音に敏感なまま。 「カラーン」だろうが「キンコーン」だろうが「ゴーン」だろうが。 鐘の音に変わりはない。 変わりはあるが、変わりない。 家の鍵に…

どれが違うっていうより全部違う。

次のうち、仲間はずれはどれですか? いちご。りんご。にんじん。みかん。 ……。 正解は、にんじん、でした。 果物の中にひとつだけ野菜でした。 ……。 全部食べ物だけど。 いちごもにんじんも、自分が果物で自分が野菜だなんて自覚はないでしょ。 こっちが勝…

365分の何日か。

休日はなにかと忙しい。 予定が何もなくても、忙しい。 何もしないから、忙しい。 何もしたくないから、忙しい。 私は動かないのに。 まわりが動くから、巻き込まれて忙しくなる。 引っ張られるように、押し出されるように。 ひとつも言葉を発していないのに…

開かないドアの開け方。

目の前にドアが現れた。 茶色くて大きくてしっかりしたドア。 ドアノブに手をかけて押す。 開かない。 次は、引いてみる。 開かない。 鍵がかかっている様子はない。 これだけしっかりしたドアだから、きっと重たいだけなのかもしれない。 思い切り、押す。 …

評判のクリーニング屋でも落とせない汚れ。

近所に評判のクリーニング屋がある。 どんな汚れも落としてくれる。 口コミが広まって、私のところまで届いてきた。 私はタンスの奥から服を取り出す。 いろんなクリーニング屋でやってもらったけど、落ちることのない汚れがついた服を。 とっくに諦めていた…

想像の斜め上下。

ショッピングモールに買い物へ出かけた。 そこのショッピングモールは少し独特。 入っているお店は見たことあるお店ばかりだけど、飛行場の跡地をショッピングモールとして使っている。 だから内装は飛行場を意識したものになっているし、駐車場の隣には滑走…

何度かスルーしてようやく見つける。

本屋に行って目的の本を探す。 なかなか見つからない。 それでも店員さんに聞いたり機械で探したりはしない。 自力で探す。 映画を観たくなったからレンタルショップへ行く。 なかなか見つからない。 「あ」から順番に並んでいるはずなのに、なぜか見つから…

目先の繰り返しが未来になる。

少しだけ遠回りだけど、あの横断歩道を渡るのか。 急な階段があるけど、この陸橋を渡るのか。 いつも迷ってしまう。 どっちが楽なのか。 どっちが得なのか。 時間のことを考えれば、陸橋。 疲労のことを考えれば、横断歩道。 これは今までの経験から、明らか…

変化球は強い直球があってこそ活きる。

いつもの行き道に猫がいない。 灰色の猫が。 きつそうな首輪をした猫が。 毎朝、ここに座っているのに。 いつものところに車が停まっていない。 白い車が。 汚れが目立つ車が。 その車の下が猫の居場所だったのに。 いつもいたのに。 だいたい同じ時間に毎日…

記憶は上書き保存される。

仕事の関係で学生時代住んでいた町へと行った。 すっかり町並みは変わっていて、記憶の中とは違う町みたい。 それでも所々にあるのは記憶通りのもの。 居酒屋、牛丼屋、小さな服屋、ビル、会社、看板。 見るだけであの頃の記憶が蘇る。 仕事を終えると学生時…