夜更かしは自分へのご褒美。
眠れないわけではなく、眠らない。
今日は夜更かしすると決めたから。
時計の針は進む。
そのたび、町は静かになる。
夜更かしすることは決めているけど、何をするかは決めていない。
決めているとすれば、何もしないと決めたことくらい。
ただ、町の中を歩いて行く。
どこに行くのかも誰に会うのかも決めずに。
ただ、歩くだけ。
危ないよ、って言われても。
安全な場所なんてどこにもないから。
ようやく夜らしくなってきた。
人も明かりも音も匂いも。
どれも眠りについて、暗闇が深まってくる。
なぜ、夜更かしするのか。
特別な理由なんてない。
眠たくないから眠らないだけ。
眠たくないから夜更かしするだけ。
無理に眠ろうとはしない。
布団に入ったり、本を読んだり、映画を観たり。
そんなことすると眠くなるから。
眠らないようにするわけでもない。
コーヒー飲んだり、音楽を聴いたり、風呂に入ったり。
そんなことすると眠れなくなるから。
眠りたいわけでも、眠りたくないわけでもない。
何も頑張らないだけ。
眠ると決めて眠れないのも。
眠らないと決めて眠ってしまうのも。
どっちも嫌だから。
どちらにも傾かないように。
夜更かしの基準は何時まで?
それも、もちろん決めていない。
決めているのは夜更かしすることだけ。
夜が夜らしくなったら、きっと自然に眠たくなるはず。
夜が夜らしくなっても、きっと自然に眠たくならないはず。
何も決めずに、夜が更ける。
まだ夜は更ける。
ただ町を歩く。
こんな日があってもいい。
何も決めずに何も頑張らずに。
まだまだ夜は深くなる。