雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

思っていたのと違うね、って言われても。

思っていたのと違うね。 そんなこと言われてたって。 私はどうすればいいの。 あなたから私はどう見えているの。 勝手な妄想はやめて。 私も知らない私を作り上げないで。 私はなにを言えばいい? どんな部屋に住めばいい? なにを着て、なにを食べればいい…

己で問答をくりかえす。

どこからか声がする。 あたりを見渡しても誰もいない。 誰かの声。 聞いたことのある声。 ああしなくちゃ。こうしなくちゃ。 誰かが囁く。 私に似た声で。 どこからか聞こえる。 目の前じゃなく。 遠く遠くから。 今の私じゃない。 私の声に似ているけど、ど…

ジャイアントキリングとは言わせない。

いつだって敵は強大。 知らない誰かがつけたランキングでは、いつも私は格下。 それだけで敵はどんどん大きくなる。 自分の目で見るよりも。 自分の肌で感じるよりも。 強くて大きい。 いつだって敵は強大。 思っているよりも強大。 誰かのせいで、いつだっ…

立っているのに寝ているように。

すくいたいのに、すくえない。 両手ですくっても、指の隙間からこぼれ落ちる。 いずれは、何もかもなくなる。 すくえた、と思ってもほんの一瞬。 そんなことに今さら気づく。 目を覚ませ。 両手ですくう。 一瞬だけ、すくえている。 それを顔にぶち当てる。 …

あなたにとって〇〇とは?っていう質問はいらない。

私はプロフェッショナル。 誰にも負けない。 誰よりも知っている。 譲れない流儀がある。 いくつかのルールがある。 少しばかりの情熱がある。 私はプロフェッショナル。 少しずつ積み上げてきた。 壊れるときは一瞬で。 それでも、諦めるわけにはいかない。…

短絡的だと簡単に言わないで。

機械に疎いから。 困ったらやってしまう。 なにをやっても、うんともすんともいわないんだもの。 それで直ることもあれば、直らないこともある。 原因はほかにある。 そんなこと言われても。 原因を探せば探すほど。 調べれば調べるほど。 なにも解決しなく…

良いことと悪いこと。

なんだか悪いことが起こりそうな予感がする。 そんなときは決まって、悪いことが起こる。 そんなこと思っているから本当に悪いことが起こるのよ。 どこからか声がする。 なんだか良いことが起こりそうな予感がする。 そんなときに限って、良いことが起きない…

改めて説明されるとなんだか恥ずかしい。

私、すごい発見したの。 居酒屋でビールを飲みながらA子が言う。 なに? B子は枝豆を口いっぱいに頬張りながら言う。 お風呂に入った時、洗う順番によってその人の隠された本当の性格がわかるの。 隠された本当の性格?なにそれ? 本当よ。結構な確率で当た…

一方通行を乗り越えたら次は進入禁止。

このあたりは一方通行ばかり。 どこもかしこも、進入禁止のマークが。 あそこに行きたいのに、遠回りばかりさせられる。 ここを通っていけば一番近いのに、ここは一方通行。 ここから先は、進入禁止。 遠回りして、ようやく目の前に辿り着いたのに。 ここか…

敵も味方も大体同じ数。

敵が現れた。 どこかで見たことのなる顔だ。 昔、どこかで出会ったことのある奴なのか。 鈍器のようなものを持っている。 ドスン、ドスンとからだの中に響く攻撃をしてくる。 防戦一方になったとき。 味方が現れた。 これもどこかで見たことのある顔。 敵の…

ひそひそ話は風に乗る。

ひそひそ話が聞こえてくる。 私に言っているわけじゃないのに、聞こえてくる。 ナカムラさんとアイザワさん、付き合ってるんだって。 ふうん。 前から噂になってたもんね。 ふうん。 スズキさんとキクチさん、別れたらしいよ。 ふうん。 長いこと付き合って…

うっすら横目で見ても見えない。

差し伸べられたその手は、透明もしくは半透明。 ゴミ袋じゃあ、あるまいし。 よく目をこらさないと見えない。 子供のころは誰かがすぐに手を差し伸べてくれた。 その手を、なんの迷いもなく見つけられた。 その手を、なんの迷いもなく握り返した。 あのころ…

片想いのようで両想い。

鏡よ鏡よ、鏡さん。 何十回、何百回、何千回、何万回と聞いても、あなたは何も言ってくれない。 世界一美しいのは誰? なんて聞きたいわけじゃないのに。 毎朝、毎晩、これまで毎日あなたに聞いてきた。 でも、どれにもあなたは答えてくれない。 あなたに問…

視界は不安定でも感度は良好。

ハローハロー。 今どこにいますか。 ハローハロー。 久しく会っていないですね。 ハローハロー。 応答願います。 ハローハロー。 この声は届いていますか。 ハローハロー。 みんな元気ですか。 ハローハロー。 ちゃんとご飯は食べましたか。 ハローハロー。 …

未来はきっと自由自在。

大丈夫、大丈夫。 いろんな人が言ってくれる。 私を気遣って、言ってくれる。 ありがたい。 励まそうとしてくれる。 腐らぬよう転がぬよう、言ってくれる。 ありがたい。 でも何が大丈夫なのかは、教えてはくれない。 本来、人に教えてもらうことではないと…

振り返ってみれば自ずと見える。

男らしく。 女らしく。 あなたらしく。 自分らしく。 らしく、って何? らしくしなさい。 誰かに言われたところで。 自分でもわかっていないのに。 どうすればいいのか、わかるはずもない。 らしく、って何だろう。 考えれば考えるほど、わからなくなる。 考…

何もせずにいることをする。

何もせずにいられたらいいのに。 何もしていないのに汗をかく。 もうそんな季節。 挨拶代わりの、暑いね、がそこらじゅうに転がっている。 踏んでしまうと、こっちまで、暑いね、と言ってしまう。 何もせずにいられたら。 何もせずにいても汗をかくのなら。 …

「おとな」と「こども」は3文字違い。

大人と子供の線引きはどこ? 子供のころはずっと思っていた。 大人っていいな。 大人になってからはずっと思っている。 子供っていいな。 これから手に入るもの。 これまで手に入れていたもの。 ないものねだり。 今はないのだと自覚したら、それが答え。 大…

じゃんけんに必死になれる人が好き。

じゃんけんに負けたからって泣かなくてもいいんだよ。 父は子に言う。 じゃんけんは理不尽だから。 子は目にうっすら涙を浮かべて父の言葉を聞いている。 みんないろんな手を使って勝とうとするんだ。いろんな駆け引きもする。でも、必勝法なんてないことは…

大切なものほど遠回り。

じっと見たらダメ! 小さいころ、母によく言われた。 とても大切なものなのに。 とても大切な存在なのに。 直視できないなんて。 直接見なくても、どこにいるのかくらいわかる。 それほど大きな存在。 それなのにあなたを直視することはできない。 感謝はし…

見間違えることは多々ある。

一生懸命に探す。 ひとつひとつ丁寧に目を凝らして。 ほんの少しの違いだから、しっかり見ないとすぐに見落としてしまう。 一生懸命に探しているのに。 ひとつひとつ丁寧に目を凝らしているのに。 ほんの少しの違いだから、なかなか見つからない。 どこにあ…

後先よりも目先を優先。

疲れたときは甘いもの。 からだもこころも癒される。 私は今。 甘いものを欲している。 甘いものに抗えない。 からだもこころも。 甘い香りに誘われて。 ふらふらと向かってしまう。 意思に反して。 命令系統を無視して。 からだが反応する。 からだが求めて…

集中しすぎると寄り目になる。

そんなになみなみに入っているから。 こぼさないように、ゆっくり歩くことしかできない。 ゆっくり、ゆっくり歩いても。 溢れんばかりに入っているから少しずつこぼれていく。 あなたが歩いたあとは、いつだって散り散り。 あなたが歩いた道のりは、すぐにわ…

正しく解いてもほどけたまま。

ふたりの男が向き合っている。 ここの問題の答え、合ってる? いいや、間違ってる。 じゃあ、これは? これも違うね。 これは? 違う。 すべて間違えた男は、ふぅ、と大きなため息をつく。 もうひとりの男はどこで間違えたのか、答えをめくりながら照らし合…

泣けるだけが感動ではない。

リミは道に迷った。 おつかい途中で道に迷った。 手元にある地図は汗でにじんで見えなくなった。 目頭が熱くなってくる。 右も左もわからない。 知っている人は誰もいない。 見たことのない景色だけが広がる。 リミは泣くわけにはいかないと、全身に力を入れ…

涙を流しても水分補給。

ジメジメする。 この時期はジメジメする。 からだに水分でできたタイトな服を着ているようだ。 からだが重たい。 水って重いんだ。 しょうがないのはわかっている。 わかっているけどしょうがない。 ジメジメする。 でも、わかっている。 水の大切さはわかっ…

見方を変えればなにかが変わる。

こんなに難しかったのか。 いつもどおりに見ていたら、なにも見えなくなる。 ただの実力不足だと実感する。 これまで違うところばかり見ていたから。 ダメなことだとわかっていながら、どうしても目につく。 いつからこうなってしまったのか。 人のせいにな…

どっちにしても後悔はする。

やらない後悔よりやった後悔のほうがいい。 なんて言われる。 確かにそうだ。 どっちを選んでも大なり小なり後悔があるのなら。 やった後悔のほうが、やった分だけマシなのかもしれない。 後悔しない選択なんてない。 そう考えれば、少しは気が楽になる。 で…

目に見えるものすべて。

あの人は私。 私はあの人。 ここは鏡の世界。 目に映る人は皆、私。 あの人は私。 私はあの人。 それなのに、わからない。 あの人がどう思っているのか、なにもわからない。 鏡の世界なのに。 だって内側は見えないから。 人の気持ちは見えない。 人の気持ち…

己を知る旅の途中。

小さな窓から覗いている。 あなたから私はどう見えている? はじめは見られていることに気づかなかった。 なんだか視線を感じて、あなたに気づいた。 そこからの私は、きっと本当の私ではない。 あなたに見られていることを意識していたから。 私があなたに…