雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

うっすら横目で見ても見えない。

 

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差し伸べられたその手は、透明もしくは半透明。

ゴミ袋じゃあ、あるまいし。

 

よく目をこらさないと見えない。

 

子供のころは誰かがすぐに手を差し伸べてくれた。

その手を、なんの迷いもなく見つけられた。

その手を、なんの迷いもなく握り返した。

 

あのころよりもまわりに人は増えたのに。

人の数の倍近くは手があるはずなのに。

 

なにも見えない。

気づかない。

 

私は誰に手を差し伸べた?

求めてばかりで、私はなにをした?

 

こっそりやってちゃあ、誰も気づかない。

 

きっと私の手も、透明もしくは半透明。

恥ずかしがってちゃあ、ダメなのに。

 

どうせなら。

透明人間になりたい。

 

そうすれば、恥ずかしいなんて思いも見えなくなるから。

 

透明人間になったとしても。

なんにもやましいことなんてしないよ。たぶん。

 

見えなくなれば。

誰にだって手を差し伸べることができる。

 

恥ずかしがることなく、誰にだって。

まわりには、こんなにたくさん人がいるのだから。

 

でも、きっと、透明人間にはなれない。

 

私が差し伸べた手も。

私に差し伸べられた手も。

 

透明もしくは半透明なのに。