雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

墓場まで持っていく秘密。

 

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私が知って悲しむのなら、墓場まで黙っていてほしい。

君は小さく笑う。

 

そんなことを言いながら、本当は全部知りたいんでしょ?

なんて返そうものなら、すべてが台無し。

言えば、きっと君は怒るから。

 

それに。

きっと君は本当に知りたくないんだ。

 

私に隠すっていうことは、私にもあなたにもデメリットがあるっていうことでしょ?

 

まあ、そうだね。

 

それなのに言うっていうことは…。

 

ことは…。

 

罪悪感に負けただけでしょ?罪の意識に苛まれて、我慢できなくなって。結局、自分のためでしょ?楽になりたいから。

 

そうかもしれないね。

 

それだけのために、私が悲しむことをわざわざ言わないでほしいの。ちゃんと墓場まで持っていってほしいの。それがあなたのプロポーズを受ける条件。

君は少しも笑うことなく、じっとこっちを見つめる。

 

わかった。約束する。

 

結婚しようというこっちの提案を受け入れてくれた君。

だから君の提案も受け入れよう。

すべてを話すことはないと思うけど、なるべく君に話せることを増やそう。

隠し事にならないよう、気をつけよう。

 

あとひとつお願いがあるの。

 

なに?

 

結婚したとしても、お墓は別々がいいの。

 

どうして?

 

私への隠し事を、約束どおり墓場まで持っていったとして。

一緒のお墓に入っちゃうと、結局知ることになるでしょ?死んでまでケンカしたくないし、嫌な思いもしたくないの。

君は、くすり、とも笑わずに、じっとこっちを見つめた。