雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

泣けるだけが感動ではない。

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リミは道に迷った。

 

おつかい途中で道に迷った。

 

手元にある地図は汗でにじんで見えなくなった。

 

目頭が熱くなってくる。

右も左もわからない。

知っている人は誰もいない。

見たことのない景色だけが広がる。

 

リミは泣くわけにはいかないと、全身に力を入れる。

 

知らない人ばかりだけど、まわりにはこんなに人がいるから。

 

リミは瞬きしながら思う。

どうしてこんなにたくさん人がいるのに。

どうしてこんなにひとりぼっちだと感じるのか。

 

手に持った地図をくしゃくしゃに丸めて、投げ捨てる。

 

どうせ、ざっくりとした地図だから。

なんとなくゴールが書かれただけの、行き方なんてまったくわからない地図だから。

 

リミはあたりを見渡す。

 

止まっていても進まない。

泣いていても変わらない。

 

立ち止まって泣くのは、本当にひとりぼっちになってからすればいい。

 

リミは自他ともに認める人見知り。

それでも、勇気を出してまわりの人に声をかける。

 

ゴールに向かうため。

欲しいものを手に入れるため。

 

欲しいものは頭の中でしっかり覚えている。

 

メモなんてなくても、覚えている。

 

ゴールはまだまだ先。

なにも見えない。

 

誰が正解を知っているのか。

誰がヒントをくれるのか。

そんなことは誰も知らない。

 

リミのはじめてのおつかい。

リミの人生最大のおつかい。

 

欲しいものは、目に見えないもの。

 

はじめては誰にだってある。

誰にだってはじめては試行錯誤。

 

リミは止まることなく、歩いていく。

欲しいものを手に入れるため。