雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

目に見えるものすべて。

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あの人は私。

私はあの人。

 

ここは鏡の世界。

 

目に映る人は皆、私。

 

あの人は私。

私はあの人。

 

それなのに、わからない。

 

あの人がどう思っているのか、なにもわからない。

 

鏡の世界なのに。

 

だって内側は見えないから。

 

人の気持ちは見えない。

人の気持ちは映らない。

私の気持ちも映らない。

 

ここは鏡の世界。

 

好きじゃない人もそうじゃない人も。

嫌いな人もそうじゃない人も。

 

すべて私を映した鏡。

どれほど鏡を合わせても、無数の私はなにも変わらない。

 

今日見たあの人は。

思い出したくもないあの人は。

素敵なあの人は。

がんばっていたあの人は。

 

すべて鏡に映った私なの。

 

あの人は私。

私はあの人。

 

されて嫌なことはしない。

されて嬉しいことはする。

 

ここは鏡の世界。

姿形は映っても、心の中は映らない。

 

相手がどう思うかなんてわからない。

 

わからないからこそ、そうする。

 

あの人が悲しめば、きっと私も悲しむ。

あの人が喜べば、きっと私も喜べる。

 

ここは鏡の世界。

 

いろんな私が、あちこちにいる。