雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

染まる色、朝昼夜。

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朝はまだ冷えるから、頬がピンクに染まる。

指先に息を当てて、ホットの缶コーヒーを買う。冷たい頬に当てたら熱すぎて嫌になっちゃう。

 

昼は騒がしい町に飲み込まれる。

音や匂いに支配されて、見たものすべてに染まっていく。私は白くないのに、いろんな色にすぐに染まってしまう。

抗うのは簡単じゃない。気を抜いたらすぐに私は消えてしまう。

ここにいるよ、と大声で叫んでも誰にも届かないまま陽が傾く。

 

夕焼け見ながら歩いていって、橙に染まった家へと向かう。

帰りたくないと思っていても、そこしか帰る場所はないから。

できるだけゆっくり歩いていたら、邪魔だと舌打ちされて睨まれる。

知らないあなたにそんなことされる筋合いはないと思ったところで、逆光であなたの顔がまったく見えない。

 

暗闇に包まれたらなにも見えなくなるのに、私は黒く染まっていることだけはわかる。

 

不公平。

いつだって不公平。

いろんな色に染まるのに、終わりはいつだって黒く染まる。

誰もいないところで黒く染まったら、元々の私は黒だということ。

 

黒く染まった私が本当の私。

 

それがわかっていれば、何色に染まったとしても大丈夫。