雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

隣のカーキはキレイに見える。

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カーキ色のブルゾン。

君が着ているのは随分と色が薄いね、僕のと比べて。

形は似ているけれど、細かいところは全然違う。

 

どうしてこんなにも違うのだろう。

君はよく似合っている。

名前も知らない君は、薄いカーキ色のブルゾンがよく似合っている。

 

どうして僕は似合わないのだろう。

濃いカーキ色のブルゾンが。

 

君のと僕の。サイズは違うけれどお互いサイズ感は悪くないのに。

色の濃さの問題だけではない気がする。

 

僕のイメージしていた着こなしを、君はしている。

名前も知らない君は。

道ですれ違っただけの君は、もうどこかへ消えてしまった。

 

ガラスに映る僕のブルゾンは、光の加減で少しだけ薄く見える。

そんなに悪くないな、と思いながら君のブルゾンを思い出す。

 

薄いカーキ色のブルゾン。

そっちにすれば良かったかな。

君の顔はもう思い出せないのに、ブルゾンははっきりと思い出せる。