雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

日記のようなもの⑤

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素直な気持ちが言えなくて。

素っ気なく「またね」なんて軽く言う。

ものすごく世話になったのに、そんなことしか言えないなんて。

 

あなたのやさしさに甘えて、私の言い分ばかり。

あなたの言い分は知らんぷり。

わかってくれていると思っているから、わかってくれていないと思ったら怒って。

それでも、あなたは私を見放すことはなかった。

 

そこには感謝しかないのに、何も伝えられず、あなたは辞令を受け取った。

 

ずっとここにいるとは思っていなかった。

異動が多い会社だから。

わかっていたのに、どうしてあなたなのだろう。

 

あなたからそれを告げられたとき、私は平静を装うのに必死だった。

 

そっか。

大変だけどがんばって。

 

そんなことくらいしか言えなかった。

見せたくないところは、私にだってあるから。

 

きっと居なくなってから実感するのでしょう。

あなたの姿を見なくなってから。

 

「ありがとう」とちゃんと言えなくてごめんなさい。

「またね」は心の底から思っている。

 

ありがとう。またね。

必ずまた会いましょう。

 

握手だけして別れる。

あなたの手の温もりは、次会うときまでしっかり覚えているから。