まぜると危険だとわかっていながら。
部屋の掃除は私の日課。
リビングもキッチンもお風呂もトイレも。
床も壁も棚の隙間も天井も便座もシャンプーのボトルの底も。
徹底的に毎日掃除する。
潔癖症なわけではない。
ただ、綺麗にしていたいだけ。
掃除のしすぎで、洗剤にはやたらと詳しくなった。
場所や汚れによって使い分けるほどに。
だから家にはたくさんの洗剤がある。
こだわればこだわるほど、掃除道具は増える一方。
それでも使い道があるだけまだマシ。
私の募る想いとは違う。
ここに来るはずのないあなたのために掃除する。
いつ来てもいいように。
そんなこと誰にも言えやしない。
もちろん、あなたにも。
あなたの行くところはもうすでに決まっているから。
目の前にある洗剤を手に取る。
まぜるな危険。
そんなことはわかっている。どれだけ掃除していると思っているの。
まぜるな危険。
わかっているけど、まざってしまう。
好きと嫉妬は、どうしてもまざってしまう。
まぜたら危険だとわかっていながら。
来るはずのないあなたを想いながら、洗剤のふたを開ける。