雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

人をダメにするやわらかいところ。

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もう立ち上がれない。

こんなにやわらかくて居心地が良いところから。

 

やわらかすぎて立っているほうがしんどくなって、座り込んだり寝転んだりしたらもうおしまい。

一歩も動きたくなくなる。

動かなくちゃと思ったところで、からだが拒否する。

 

こんなにやわらかいものに囲まれていたら、なにも聞こえない。

まわりの音や声をほとんど吸収してしまうから。

たまに聞こえてくるのは、耳障りの良いものだけ。

それ以外は誰かがなにを言っても口パクにしか見えない。

言葉は入ってくるのに、染み込まない。

 

ここはこんなに居心地が良いから。

手の届くところに必要なものを配置すればとりあえずは大丈夫。

 

しばらくして、気が向いて、立ち上がってみれば。

足腰が弱っていてすぐに転んでしまう。

でもその場にいればやわらかいままだから痛くない。

 

やわらかいものばかり咀嚼しているから歯も顎も弱くなった。

やわらかいことばかり受け入れるから頭の中はプルプル。

脳ミソはきっとこんなにやわらかいのだろう、なんて。

 

そんなことばかり考えて、このままではダメだと立ち上がる。

グラグラするこの場に立ち続ければ体幹を鍛えられるとか、まだ言い訳ばかり。

これだけやわらかくて弾力があるのならジャンプしてここから離れられるのに、上にばかり飛んで、同じところに着地してばかり。

 

着地したら下がやわらかくて、転んだけれど痛くなくて。

そのまま、また寝転んで。

 

仕方がないったらありゃしない。