雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

あなたが好きだったお酒を飲む。

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普段はひとりじゃ飲まないのに。

今夜はひとりお酒を飲む。

 

なにがあったわけではなく、なんとなく。

具体的な理由があるわけじゃない。

 

あなたが好きだったお酒。

あなたと付き合っていたとき、一口だけもらって不味くて、それ以来。

どこがどう美味しくてあなたが好んで飲んでいたのかわからなかったから。

今なら少しはわかる気がした。

 

あえて理由を探すとしたら、そのくらい。

 

真っ暗な部屋でカーテンを開けたまま。

いくつも明かりが見えるのに、この部屋は薄暗いまま。

 

グラスを持って口に運ぶ。

 

不味い。

 

あのころと同じくらい、不味い。

 

グラスをテーブルに置く。

やっぱり私はあなたのことを理解できなかったし、できない。

 

グラスを手に持って立ち上がる。

多少暗くたって、私の部屋だからゆっくり歩くことくらいなんともない。

 

残ったお酒をシンクに流す。

氷が音をたててはじけた。

 

ああ、不味い。

 

そう言いながら冷蔵庫を開ける。

開けたら光がやたらと眩しくて。

 

目を細めながら、水を取り出した。