傘泥棒に言いたいこと。
あなたは傘泥棒。
自分が濡れたくないからって人の傘を盗る。
ひどい人。
鍵かけないから、って。
ひどい人。
盗られた方が悪いなんて、いつからそうなったの。
鍵つきの傘立てなんて、そうそうあるものじゃないし。
ついさっきから降り出した雨。
出かけようとしたときにちょうど降ってきたから。
私は傘をさした。
濡れたくなかったから。
あなたと同じ。
傘のないあなたは、私の傘を持って行った。
あなたはどこまで行くの?
そんなに濡れたくないの?
少しくらい濡れたって、少し経てば乾くのに。
濡れたくないあなたは、きっと涙も流したくないのでしょう。
人が濡れるのはお構いなしに。
いつだって自分のことばかり。
ひどい人。
私はどうやって帰ればいいの?
鍵のない傘立てには、傘が3本。
紺色の傘が1本、私と同じビニール傘が2本。
でも、私のものではない。
取っ手が違うからすぐにわかる。
あなたは傘泥棒。
自分が濡れたくない。
ただそれだけの理由で、人の傘を盗る。
私は少しくらい濡れたって構わない。
私は少しくらい泣いたって構わない。
私はあなたとは違う。
小走りで帰って、ほら見ろって言ってやる。
どうせすぐに乾くから。