夢、秘密、一方通行。
夢に出てきた人は、目が覚めて現実に戻ったらやたらと気になる存在になる。そういうこと、誰にだって経験あるでしょ?
あなたに言う。
まあ、ないことはないかな。
あなたはどうにも歯切れが悪い。
芸能人でもあるでしょ?夢に出てきた途端、急に気になってテレビとか映画とか観ちゃうこと。
まあ、ないことはないかな。
どんな因果関係があるのか知らないけれど、きっと自分とその人だけの秘密のように感じるからだと思うの。
夢なのに?
うん。だから完全に一方通行よ。でも、想いってそんなものでしょ?
うーん、まあ…ね。
あなたの様子がどこか変で、空気がなんだか重たい。
そんなに変なことを言ったのだろうか。
ねえ、私が夢に出てきたことある?
冗談交じりに言う。
あるよ。
まさかの返答に驚いた。間髪入れず迷うことなく、あなたは言った。
俺の夢は見たことある?
いつもなそんなことないのに。あなたは真面目な表情で私の目をじっと見つめる。
本当のことを言うべきか。嘘ついてお返しするべきか。しばし悩んで、私は言う。
見たことない。
真剣な眼差しのあなたに嘘はつけなかった。
そうか。
がっかりした様子を隠そうとしないあなた。
本当に好きな人は、願っていてもなかなか夢に出てきてくれないものよ。
そう言おうとしたけれど。
なかなか見られないあなたのそんな姿。
もう少し見ていたいから、もう少し見たあとで言うことにした。