雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

ドリンクバー、ひとりグラスひとつ。

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レモンスカッシュ、あったよ。

あなたが好きなことを知っていたから言っただけなのに。

 

ひとり分しか頼んでいないからダメだよ。

あなたは私が差し出したドリンクバー専用のグラスを受け取らなかった。

 

一杯だけならバレないよ。

小さな声で言う。

 

ダメ。

 

私レモンティー飲んでいたけど水もあるからちゃんと洗えるよ。

 

ダメ。

 

レモンティーとレモンスカッシュ、どっちもレモンだからそんなに気にならないよ。

 

そういう問題じゃない。

 

マジメね。

我慢できずに、あなたに言う。

 

マジメとかマジメじゃないとか、そういう問題じゃない。

あなたはまっすぐ、私を見る。

 

気づいてる?

私はもう喉は乾いていないことを。

わかってる?

あなたがレモンスカッシュ好きなことを私が知っていたことを。

 

マジメね。

もう一度、あなたに言う。

 

テーブルのはしっこにあるボタンを押して、店員さんを呼ぶ。

 

すみません。ドリンクバー、ひとつ追加お願いします。

すぐに来てくれた店員さんに言う。

 

もう少しだけ付き合ってよ。

ありったけの勇気を振り絞って、あなたに言う。

 

わかったよ。本当にレモンスカッシュ、あるんだよな?

 

あなたはマジメ。

そして、やさしいね。