雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

同じ思いなら答えも同じであってほしい。

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なんだかぬるい。

 

そこの自動販売機で買ったばかりの缶コーヒーがぬるい。

 

ここは人通りが多いからね。

君は言う。

 

これじゃあ「あったか~い」じゃなくて「ぬる~い」だよ。

僕はプルタブを引いて飲む。

ぬるいコーヒーは不味い。

熱くも冷たくもないコーヒーは、不味い。

 

そんなに熱いのが飲みたかったの?

君はぬるい缶コーヒーを頬に当てる。

 

かわいい。

思わず口に出すところだった。

 

そんなに熱いコーヒーが飲みたいのなら、もっと人気の無いところにある自動販売機を探さないと。

そう言いながら君は缶コーヒーをかばんに入れる。

 

飲まないの?

 

うん。もっと熱いコーヒー飲むんでしょ?

微笑む君は、やっぱりかわいい。

そんなこと、言えやしないけど。

 

本当にいいの?

 

いいよ。

 

じゃあ、行こうか。

 

人気の無い、どこかのはしっこにある自動販売機を探しにいく。

 

君も同じ気持ちでうれしいよ。

言えるはずのない言葉を飲み込む。

ただのやさしさかもしれないし。

僕の妙なこだわりに対する憐れみかもしれないし。

 

それでも、熱々の缶コーヒーを見つけたら。

これまで言えなかったことを、君に言おう。

そう決めた。

 

そのとき君は何と言うのだろうか。

 

冷たい手をポケットに突っ込んで、君と他愛のない会話をする。

カウントダウンのような君との会話。

いつもにも増して、緊張する。

 

君はあたりを見渡して、それらしい自動販売機を探している。

僕も同じようにする。

 

同じ思いなら。

答えも同じであってほしい、と願いながら。