雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

ふすま、すき間、狭間。

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ふすまがピシャリと閉まった。

少しばかり音や明かりが漏れるように布団に入ったのに。

 

狭い我が家では、リビングと寝室はふすま一枚隔てただけ。

もちろん僕の部屋も君の部屋もない。

 

いつからこうなったのだろう。

いつから君は「子供が欲しい」と言わなくなったのだろう。

 

今のままじゃ無理だよ。

君から何度もそんなことを言われた。

 

なのに、君はまだここにいる。

それに、僕が甘えている。

だから、君はふすまを閉める。

 

自分でもわかっている。

 

ふすまが閉まり。

太い光が細い光に変わった。

すぐそこから聞こえる音が、やたらと遠く感じる。

 

どうしたらいいのか。

君に聞くことはできない。

ふすま一枚、開けられないでいる。

 

どうしたらいいのか。

答えはもうわかっているはずなのに。

 

君との距離はふすま一枚分。

 

わかっているのに。

夢の中にいるように、からだが上手く動かせない。