雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

夜更かし、時間潰し、ひとり遊び。

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今夜は暇なの。

そう言ったら、パズルを渡された。

1000ピースのパズル。

 

暇つぶしには最適。俺もよくやる。

あなたはそう言って箱を差し出した。

 

家に帰ってテーブルの上にパズルをばらまく。

1000ピースあるから、けっこうな量だ。

 

パズルなんて何時以来だろう。

はしっこから作っていく。

外堀から埋める。

 

なにかの根回しのように。

なにかの捜査のように。

 

BGM代わりのテレビでは、刑事もののドラマが流れている。

パズルをやりながらだけど、気になる。

配役でなんとなく犯人に目星がついているけれど、謎解きは気になる。

 

やっぱり。

私の陳腐な推理は当たらなかったけれど、犯人は当たった。

犯人探しは終わっても、探しているピースは見つからない。

 

テレビを消す。

集中しよう。

少しずつ、少しずつ。

パズルが完成に近づいていく。

 

なんだか楽しくなってきた。

ゴールはもう見えている。

もうこんな時間。

スピードを上げる。

 

暇つぶしには最適。

あなたの言葉通り。

いつもならもうとっくに寝ている時間。

 

とうとう最後の1ピース。

バチッとハマって完成。

どこかの国の素敵な風景。

 

しばし眺めて、気づく。

 

パズルは完成したら役目を終える、と。

 

額縁ないから飾るわけにはいかないし。

この部屋には合わない風景だし。

そもそも、貰ったわけではないし。

 

完成したパズルは邪魔なだけ。

大きければ大きいほど達成感もあるが、邪魔でもある。

 

完成したパズルを眺める。

 

今夜は暇なの。

あなたにそう言ったのは、こういうことじゃないのに。

 

もうこんな時間。

早く寝なくちゃ。

 

パズルを写真に撮って、バラバラに崩していく。