雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

再会、立ち位置、確認。

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スーパーに買い物へ行ったら、偶然知人と出会った。

 

久しぶり、元気?

お互いに挨拶する。

 

風の噂でこの町に知人が戻ってきていると聞いていた。

確認の連絡はしなかったし、連絡もこなかった。

 

私と知人はそのくらいの関係。

そんなことは口に出せるわけもなく、心の中で思う。

 

当たり障りのない近況報告をする。

お互い、手にカゴを持ったまま。

 

上っ面な会話と表情をプカプカ浮かべる。

お互い、カゴの中身に視線をチラチラ送りながら。

 

知人のカゴには、牛肉やらビールやらこじゃれた野菜やらが入っていた。

風の噂と波風立たない会話だけじゃわからないものが、少しだけ見えた。

 

こっちは鶏肉だし発泡酒だしバラ売りの野菜だし。

 

長話する気はさらさらなかったし、早くこの場を立ち去りたいのに。

 

終わりをちらつかせたら、知人がやたらと新たな話題を提供してくる。

求めていないのに。

 

いつまで薄っぺらい話をさらに薄くした会話を続けるのだろうか。

 

私はもう知人のカゴの中身は見ていない。

知人は何度も私のカゴの中身に視線を送る。

 

知人はニヤニヤ笑っている。

なにが面白いのか。

 

お互いの気持ちは、もうわかっている。

何が面白いのかもわかっている。

私も知人も。

 

口には出せないから心の中で思う。

 

だから私とあなたはこういうレベルの関係なの、と。

 

優劣をつけているのは知人よりも私のほうだとわかっていながら。

今度から別のスーパーへ行こうと、今決めた。