別れ際、涙なし、言葉なし、手を振るだけ。
別れはいつしか当たり前になってくる。
昔のように、泣いたりはしない。
いつもすぐそこにあるから。
慣れてしまったのかもしれない。
またいつでも会えるよ。
私は言う。
そんなことはきっとない、と思いながら。
そうだね。
あなたは言う。
思いは私ときっと同じだろうに。
私もあなたも、それを口にはしない。
お互い大人になった。
お互い歳を重ねた。
泣いたところで何も変わらないことを知ったから。
泣かなくたって、悲しさ寂しさはちゃんとわかっている。
いつでも会えるほどお互い暇じゃなくなった。
それでも、もう二度と会えないほど忙しいわけではない。
別れ間際はいつでも実感できず。
別れたあとに実感する。
目の前にいなくなったときにはじめて、いなくなったのだと気づく。
また会おう。
いつかは約束しない。
さよなら、またね。
いつかの未来に。
未来のいつかに。
お互いもう大人だから。
そんなこと言わなくたってわかっている。
涙も言葉も出さずに。
手を振るだけで、わかっている。