雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

冬にアイスを食べる男の主張。

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冬なのによくそんなの食べられるね。

アイスを食べる俺に君は言う。

 

風呂上りだし、暖房効いてるし。なんなら冷房効かせた夏よりあったかいよ。

俺はアイスを食べながら言う。

 

そうかもしれないけど。アイス食べるほど暑くはないでしょ?見てるだけでこっちが寒くなる。

君は両腕を抱きしめて、寒い素振りをする。

 

でも、夏にラーメン食べるだろ?熱々の。

君の理論に乗っかって君に言う。

 

食べるけど。あれは汗をかくために食べるようなものなのよ。アイスは寒くなるために食べるわけじゃないでしょ?

君の謎めいた理論はまだ続く。

俺はそれを少しも理解できないでいる。

 

食べる?

論より証拠。食べてみればわかるはずだと、俺はアイスを差し出す。

 

いらない。

君は拒む。

 

ちょっと待ってて。

きっとそう言うだろうと思い、俺は冷凍庫へ向かう。

 

はい、これ。

パピコの残り1本を君に差し出す。

 

いらないってば。

君は拒む。

 

パピコはこうやって恋人同士が幸せを分け合って食べるために作られたんだ。恋人に夏も冬もないだろ?だから、冬でもアイスを食べるんだ。

 

何?その謎理論。全然、論破できてないんだけど。

君はそう言いながらも、パピコを手に取る。

 

お互い様だろ。

俺はパピコを口に運ぶ。

 

つめた~い。

君はパピコを左右の手で何度も持ちかえる。

 

美味しいよ。

俺はパピコを食べる。

 

さっきの理論、パピコ限定じゃない。

そう言いながら、君はパピコを食べる。

 

美味しいだろ?

 

美味しいけど。

 

いつもよりパピコが美味しく感じたことは、俺だけの秘密にしておく。

この理論に君はきっと反論するだろうから。