雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

ありがとうのサイン。

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道を譲ってくれた車がハザードランプで「ありがとう」ってするのいいよね。

君は助手席に深く座って言う。

 

まあね。みんなするわけじゃないけど。

僕はハンドルを握ったまま言う。

 

私はちゃんとお礼する人の方が好きだな。

君は視線をチラリとこちらによこす。

 

あと、クラクション鳴らす人もいるでしょ?あっちよりもハザードランプ派だな。

 

ラクションだめなの?

 

だめじゃないけど。どんなにやさしく押してもちょっとびっくりしちゃうじゃない?あれは強さじゃなくて長さの問題だから、音の大きさは変わらないし。急にクラクション鳴らされたら関係ない人たちは「なに?」ってなる人もいるだろうし。

 

まあ、確かに。

 

それにハザードランプだったら、譲ってくれた人にだけのサインって感じでいいじゃない。

 

ふうん。

 

基本的にお互い知らない同士だし、顔もはっきり見えるわけじゃないし。でも、だからこそ「ありがとう」ってできる部分もあるでしょ?

 

まあね。俺たちもそうかもしれないし。

 

でしょ!そうなの!お互い照れ臭かったり、今さら感が出たりでちゃんと「ありがとう」って言えないところ、あるでしょ?

 

まあ。

 

だから、サイン決めよう。

 

サイン?

 

そう。「ありがとう」のサイン。

 

なんかの歌詞みたいだな。

 

いいじゃない、私たちだけのサイン。

 

えーっ?例えば?

 

うーん…、まばたき連続5回とか?

 

ダサいね。

 

なによ。なにかほかに良いのがあるわけ?

 

考えとくわ。

そう言いながら、ハンドルを回して車線変更する。

スピードを落としてくれた後方車にハザードランプを点けた。

 

チラリと君を見ながら、5回点滅させた。