雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

伸びた影、伸ばした手。

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伸びた影。

あちこちで忙しなく動いている。

 

町の影の面積が増えたせいで、私の影は満ち欠ける。

 

そして時々。

私の影とあなたの影が重なる。

 

本当の私とあなたは、1ミリも重なっていないのに。

 

時間の経過と共に、影に覆われていく。

残り時間はあと僅か。

今日という日が終わりを告げる。

 

何度もくりかえし、何度も今日という日が終わっていった。

すぐそこにあなたはいるのに。

 

手を伸ばせば届くところにあなたはいるのに。

いつだって私は手を伸ばせずにいる。

 

あなたのうしろを歩く。

私とあなたの歩く方に、長い影が伸びている。

 

あなたに触れたいのに。

あなたに重なりたいのに。

 

私はあなたと距離をとる。

 

あなたの指先の影に。

私の指先の影を重ねる。

 

あなたにバレないようにこっそりと。

 

手を伸ばせば触れるのに。

あと一歩踏み出せば重なるのに。

 

影の中であなたの手に触れる。

 

町はすっかり影に覆われている。

今日という日が終わる。

 

今日はこのくらいで許してあげる。

 

あなたが気づいているのかどうか、確かめることもできないから。

今日はこのくらいにしといてあげる。

 

いつか必ず、確かめるために。

 

重なった影は、大きな影に飲み込まれた。