雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

雨降り、傘さし、ハローグッバイ。

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雨降り日は世界が狭くなる。

 

海が広がって狭くなる。

空が低くなって狭くなる。

みんな傘をさして狭くなる。

 

歩くスピードも車の速度もゆっくり。

傘がぶつからないように。

事故が起こらないように。

 

だから。

きっと。

 

雨降り日は、みんなやさしくなるんだね。

 

雨は嫌だと誰かが言った。

いろいろ不便になるから。

 

濡れないように。

手が塞がって。

気分が滅入って。

髪の毛がうねって。

 

世界が狭くなるのは。

みんな自分の方ばかり見ているから。

晴れた日よりも、自分のことが気になるから。

 

なのに。

それなのに。

 

ゆっくり進んでぶつからないように。

傘が誰かにぶつからないように。

 

誰かのことを考えている。

自分じゃない、誰かのことを。

晴れた日よりも、他の誰かのことを気にかける。

 

雨降り日は。

みんなやさしくなるから。

 

雨降り日は。

やさしい日になるんだね。