雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

逆上がり、まだできますか?

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公園のほうからキャッキャッと声がする。

小学生の男の子と女の子たち6人。

鉄棒で遊んでいる。

 

懐かしいな、とぼくが言う。

 

楽しそうね、と隣を歩く君が言う。

 

前回り。逆上がり。

男の子が回る。

女の子も回る。

 

逆上がりできる?

君はぼくに言う。

 

逆上がり?どれくらいやってないだろう。

ぼくは記憶を辿る。

 

逆上がり、できてたの?

君は笑う。

 

できたよ。

ぼくは言う。

 

今は?

 

できるよ。

 

できるの?

 

できるよ。

ぼくは強めに言う。

 

公園では前回り逆上がりに飽きた男の子たちが、横からぶら下がったり足からぶら下がったり。

こんなこともできるよ、と競い合っている。

 

男子ってすぐかっこつけるよね。

君はぼくに言う。

 

そう?

ぼくは君の目を見ることができない。

 

やってみてよ、逆上がり。

君が肩をぶつけてくる。

 

今度ね。今、あの子たちが遊んでいるから。

ぼくは肩で押し返す。

 

そんなことを言っていると、子供たちは鉄棒に飽きてどこかへ行った。

 

あいたよ。

君は鉄棒を指差す。

 

今度ね。

ぼくは歩幅を広げて歩く。

 

できるの?

 

できるよ。

 

ぼくも君も、ずっと笑ってる。

笑う意味は、きっと違う。

 

家の近くの公園に鉄棒があったな。

そんなことを思い出しながら、さらにスピードを上げた。