いつか雨はやむけど今やんでほしい。
雨が降るたび寒くなる。
ただでさえ、寒くなってきたのに。
家を出てすぐに、雨が降ってきた。
傘は持っていない。
曇ってはいたけれど、降りそうにはなかったのに。
なにも当てにはできない。
私の勘なんて、そんなもの。
買ったばかりの薄手のコートなんて着てくるんじゃなかった。
そう思いながら、近くの喫茶店に入る。
窓際の席にすわり、コートを脱ぎ、背もたれにかける。
いくつかついた雨粒を手で払いのける。
着ていればいつか汚れるだろうし、濡れることもあるだろう。
でも、今日だけはなんだか嫌だな。
頼んでいたコーヒーがやってきた。
コーヒーを飲みながら外を見る。
窓ガラスには雨粒がいくつも斜めに走っている。
うっすらと窓ガラスには細い目つきの私が映る。
やまない雨はない。
そんなことはわかっている。
そんなことを聞きたいんじゃない。
いつかではなく。
今、やんでほしいのに。
雨粒は増える一方。
永遠のよう。
飲みたくもないコーヒーを飲む。
やまない雨はない。
そうだね、なんて言っている余裕もない。
あんなにあった時間の余裕。
今ではすっかりなくなって。
カウントダウンがはじまっている。
永遠のようだった時間は、やはり有限。
そんな当たり前のことを当たり前に思い出していると、雨がやんだ。
店を出る。
飲む予定はなかったけれど、ホットコーヒーを飲んだのに。
からだが冷える。
雨が降るたび寒くなる。
手に持ったコートを羽織る。
それでも、やっぱり、まだ寒い。
急いで小走りで、駅へと向かう。
少しだけあったかくなってきた。