雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

これからはじまる見えない鬼から逃れる日々。

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触れられたら、おしまい。

隠れなきゃ。

逃げなくちゃ。

 

あっちにもこっちにもいる。

目で見ることはできないから。

感じることしかできないけれど。

 

逃げて。

逃げなくちゃ。

息を止めて。

息を殺して。

 

呼吸で居場所がバレないように、マスクをする。

あっちにもこっちにもいるから。

 

触れられたら、おしまい。

けれど、逃げ切ることはできない。

触れられずにいることなんて無理。

 

鬼は無数にいる。

見えない鬼が、数え切れないほど。

 

家の中に逃げ込む。

隠れる。

それでも鬼はついてくる。

 

触れてしまっただろうし。

マスクをしていても吸い込んでしまっただろう。

 

どうしよう。

策はひとつ。

 

石鹸つけて手を洗う。

入念にうがいをする。

 

鬼に捕まるわけにはいかない。

手洗いうがいをしても捕まってしまうかもしれないけど。

やらないよりかは、いい。

 

そうでもしないと。

心も体もゆっくり休めることができない。

 

鬼に捕まったら。

ゆっくり休むことなんてできないから。

 

ゆっくり休んでね、なんて言われても。

きっとゆっくり休むことはできないから。