つれない扱いと雨に耐えるだけ。
大きな傘はいいね。
ふたりして入れるし、ひとりなら絶対濡れないし。
小さな傘もいいね。
持ち運びに便利でしょ。
ひとりだけなら傘として役割をちゃんと果たしているし。
中くらいの傘が言う。
ふたりはいいね。特長があって。
私なんかすべて中途半端。
どっちつかず。
あっちつかず。
こっちつかず。
汎用性が高い、なんて言われても。
言葉通り、便利なだけ。
雨粒がいくつも落ちて、そのたび音を立てて弾ける。
三つの傘が集まる。
ぶつかり合って、隙間に雨粒が落ちる。
みんな一緒だよ。
大きかろうが小さかろうが、中くらいだろうが。
私たちはどうせ雨がやめば邪魔者扱い。
すぐに忘れられるし。
すぐにどこかに置いていかれるし。
すぐに知らない誰かと入れ替わるし。
私たちは似たもの同士だから、あっち行ったり、こっち行ったり。
世間の風には弱いの。
すぐに壊れてしまう。
身も心も。
そうしたら、もういらない、って他の誰かがやってくる。
私たちの代わりなんて、たくさんいるの。
あなたが一番世の人に求められているの。
大きな傘と小さな傘が中くらいの傘に言った。
あなたも十分、魅力的よ。
もちろん、私たちも。
雨さえ降っていれば、私たちは大切にされるの。
大きさなんて、大して気にされない。
雨さえ降っていれば。
雨が弱まってきたことに気づいたのか、そうじゃないのか。
それぞれの先っぽから、涙のような雨粒がいくつか零れ落ちた。