雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

昼は眩しいし夜は外から見えるから。

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フウカは窓を開ける。

心地良い風が入ってくる。

 

カーテンがふわりと膨らんで、フウカの視界を遮った。

 

淀んだ部屋の空気が生まれ変わる。

新鮮な風に乗って。

心地良い風ばかりではないけれど。

 

からだを包み込む生温い風も。

からだを突き刺す冷たい風も。

カーテンが膨らんでも、揺れる程度でも。

 

窓を開けてカーテンを開けると。

知っているようで知らない世界が広がっている。

 

こっちと繋がっているはずなのに、そっちは別事みたい。

 

こっちからそっちは見えて。

そっちからこっちも見ることができる。

 

誰もこっちなんて見てないわ。

フウカは呟く。

 

そっちは暗く沈んでいるのに騒がしい。

こっちは明るく浮かび上がっているのに静か。

 

誰も見ていないわ。

声が響く。

こっちにもそっちにも。

 

繋がってなんかいないわ。

声が響く。

こっちにもそっちにも人影が見える。

 

フウカは窓を閉め、カーテンを閉め、服を脱ぎはじめた。