雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

未来は思っているよりもすぐそこにある。

 

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ヨウコとケンジは缶ビールを片手にソファに沈み込んでいる。

 

テレビでは密着番組が流れている。

ふたりにはまったく関係のないジャンルの人物。

 

それでもふたりは、じっ、と画面を見つめる。

 

こういうの観ていると、自分もがんばろう、って思えるよね。

コマーシャルになったタイミングでヨウコが呟く。

 

まあ、何をがんばるか、だけどね。

ケンジはビールを口に運ぶ。

 

そこが問題よね。

 

だな。

 

私たちはこれから何をがんばるんだろう?

 

さあ。未来のことはわからないし、わかりたくもない。

 

未来のこと、知りたくないの?

ヨウコはビールを飲みながら言う。

 

知ったら面白くないでしょ。

ケンジは小さく笑う。

 

私は知りたいけどな…。

 

未来より今だろ。何をがんばるのかもわからないんだから。ちゃんと探さないと、お互いに。

ケンジは残ったビールを一気に流し込む。

 

まあね。未来より今。なんだか、さみしいね。

ヨウコもビールを一気に飲み干す。

 

あっ、明日雨だって。

ケンジは前のめりになる。

 

50%か。微妙だな。

ケンジは天気予報を食い入るように見つめる。

 

明日の天気は気になるわけね。

ヨウコはそう言うと、ソファから立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。